暮瀬堂日記〜初蝶
きのう、初めて蝶々を目にした。私にとっての初蝶である。
初蝶来何色と問ふ黄と答ふ 高浜虚子
俳句初学の頃、虚子のこの句を知ったとき、こんな自由な感じで詠んでもいいのか、と驚くと同時に、十七音に引きずり込まれる感覚をも実感したものだった。
そして、詩か俳句か、詩とは何か詩人とは何か、ずっと考えていた。たどり着いた自分なりの答えは、
詩人とは
そこらへんに落ちている詩を
言葉で翻訳すること
俳人とは
流れゆく季節が
絶景だと知らせること
そんなことを思い出していると、また蝶が飛んで来て、白い羽からこぼれる鱗粉が、菜の花に化粧を施した。
蝶は、かけがえのないひと時を、知らせに来たのかもしれない。
(二〇二一年 三月十八日 木曜 陰暦ニ月六日 啓蟄の節気 菜虫化蝶 【なむしちょうとなる】候)
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