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暮瀬堂日記〜戻り鰹

 生の鰹を見つけると、これで最後かな、と思いつつ購っている。

 これまで、十月も半ばになるまで「生」の鰹を口にすることなど出来たであろうか。十年ほど前は、解凍物しか手に入らなかったはずである。
 冷蔵や冷凍技術が向上し、鮮度のいいものが長く味わえるようになったのかもしれない。

   もう二度と戻らぬ戻り鰹かな

 冬になっても、ずっと戻って来てほしいものである、そんな思いを込めて一句を手控えた。


(新暦十月十ニ日 旧暦八月ニ十六日 寒露の節気 鴻雁来【こうがんきたる】候)

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