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暮瀬堂日記〜おでん

 この冬、初めてのおでんを拵えた。
 種は何でも好きであるが、家人はがんもどきに目が無いので外す訳にはいかない。こんにゃくは白いのを探したが見つからず、生こんにゃくから作られた物を落手し、手ずから串に刺した。大根は一本98円なので、農家の方々には、心から頭が下がる。

 卵は一人二個ずつと思い四個茹でたが、

  おでん煮る玉子の数と頭数 奥村せいち

 などは目に浮かんで面白い。
 おでんは、元々は田楽を略したもので、関西では「関東炊き」と言われるように関東が本場である。

  硝子戸におでんの湯気の消えてゆく 虚子

 いい句である。湯気の流れが鮮明になり、外気の冷たさが伝わって来て、再びおでんの温かさが目に浮かぶ。そんな俳人の句を前にして、堪らず私も一つ口に入れていた。

  昆布から喰らふおでんのリボンゆゑ


(二〇二〇年 十一月廾日 金曜 陰暦十月六日 立冬の節気 金盞香【きんせんかさく】候)

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