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持続可能な社会の作り方は宇宙移民に学べ
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理想社会の設計方法について。
今回は…
異星への移住に成功した移民は、いかにして豊かな生活と豊かな自然を両立する理想社会を実現できたのか?
これまで宇宙移民の物語を話してきましたが、ここからは一人の移住者の語りで、不可能を可能にした理想社会の秘密を解き明かしていきます。
まずは、移住者たちの考えた経済と環境を両立させるための基本的な手法を紹介します。
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目指した理想社会
私たちが考えた理想社会は「すべての住民が生活の不安がなく暮らせ、自分に適した人生を送れるフェアな社会」です。
故郷の星では、個人は経済を大きくするために存在しているようでした。
朝から晩まで自分を殺して働く過酷な日々。どこまでそれに耐えられるかわからないし、いつ職を失うかわからない不安。脱落したら生活ができなくなる恐怖で心身をすり減らし、何のために生きているのかわからなくなる。
そんな日々でした。
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そういう生活に戻りたくないという思いから、この星では誰もがいい人生を送れる社会をつくろうと考えたのでした。
もちろん、経済と自然の力も借りなければ、いい人生を送れる社会をつくることはできません。
なので、社会を持続可能にするには、経済と環境の両立が必要不可欠な前提条件になるのです。
直面した高いハードル
経済と環境の両立には、とても苦労しました。
というのも、経済成長と環境破壊は表裏一体の関係にあるので、環境と資源の利用許容量をこえない規模に経済規模を合わせなければならなかったからです。
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経済を小さくして起こる問題は「貧困」です。
経済が小さくなることで個人も社会も財力が減ってしまうと、理想社会を実現するのはかなり難しくなります。
経済を優先したら環境が壊れてしまい、環境を優先したら社会が壊れてしまう…。
この難題をどう克服したらいいのかわからず、私たちは何度も心が折れそうになりました。
しかし、経済を優先する道を選ぶことは、やっぱりできませんでした。
故郷の星の失敗を見ているからです。
経済を優先する道を選べば、必ず破滅の未来が待っています。
環境も資源も有限であれば、経済を無限に大きくすることはできるはずがありません。もちろん、人口を無限に増やすことも不可能です。
経済のメタボ化と人口爆発の先にあるのは、少ない資源と食糧を巡って紛争が多発する荒廃した世界です。
どんなに克服が難しくても、楽な道へ逃げるわけにはいかないのです。
それに、私たちの移住した星は、故郷の星の3分の1の規模です。
環境と資源の利用許容量が故郷の星の3分の1しかないのに、経済を大きくする道に進んでしまったら、あっという間にこの星は住めない環境になってしまうでしょう。
ただでさえ高いハードルが、さらに上がってしまいましたが、いま考えると、追いつめられたことで不思議な力が生まれ、奇跡を起こせたのだと思います。
目指したイノベーション
私たちは、経済をスリム化させても生活の豊かさが失われない社会を発明することにしました。
社会を持続可能にするには、やはり環境に経済を合わせるしか方法がないからです。
星の健康のために経済の規模を合わせるのは、健康のために適正体重にするのと一緒です。
そのために暴飲暴食の食生活から腹八分目の食生活にチェンジする必要があるように、大量生産・大量消費・大量廃棄の大食い経済を改めなければなりません。
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私たちの行う経済活動は、星には毒性の強いものです。
度が過ぎた経済活動を行うと、私たちは星にとってウイルスのような存在になってしまいます。
宿主が死んでしまえばウイルスが生きられないように、星が死んでしまえば私たちも生きられません。星を弱らせる経済活動を行うことは、自分たちを弱らせる自殺行為であるのです。
しかも恐ろしいことに、経済には満腹中枢がありません。だから休むことなく暴飲暴食を続けることが可能です。
このモンスターが大きくなりすぎないように注意しないと、星にあるすべてのものはたちまち食い尽くされてしまうでしょう。
経済をメタボ化する暴飲暴食の悪習慣を改めることなしに、子孫に命をつないでいくことはできないという現実に向き合い、私たちは困難なイノベーションに挑戦しました。
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