「題詠マラソン2003」1〜25

001:月

短歌

月の塗装のお金が足りなかったせい 真ん中らへん薄くなってる

川柳

飲み干したあとは月からいなくなれ


002:輪

短歌

輪になって踊らなければ カマドウマ 呼吸をやめるしかないでしょう


川柳

年輪を重ねて四国まで行こう


003:さよなら

短歌

プリントを剥がしたあとが線状になっているからさよならなんだ


川柳

さよならも言わずに 言うね 瓶の底


004:木曜

短歌

木曜がごみの日なのはニッケルが金属なのと同じ仕組みね


川柳

木曜日だけ現れて餅をつく


005:音

短歌

音もなく近づいてきてメルヘンの続きは二度と書かないという


川柳

初音ミクから菊池寛まで


006:脱ぐ

短歌

呪われて駱駝になった王様のいびきみたいな上着は脱いで


川柳

白無垢を着せられてすぐ脱がされる


007:ふと

短歌

市役所はペーパーウェイトに、区役所はメダルにしよう ふと思い立つ


川柳

灰のレースをふと見てしまう


008:足りる

短歌

満ち足りた生活だけど満ち足りた宮廷画家はいない まぶしい?


川柳

足りないわプラハのお城一つでは


009:休み

短歌

馬鹿も休み休み言ってよ、球場は人がいないとアザレアだから


川柳

学帽をママに預けてずる休み


010:浮く

短歌

わたしもう昼光色の幽霊ね 髪の先から浮いてきちゃった


川柳

トルマリンあなたもきっと浮かばれる


011:イオン

短歌

本物のイオンモールは予想より腕毛が濃くてぼうぼうだった


川柳

マイナスイオンよりありえない


012:突破

短歌

拍子木で覆われた地をあなたなら突破できると思われていた


川柳

こけももの一本槍で突破する


013:愛

短歌

愛は詩人の靴箱 脳みそをオープンカーと取り替えたいわ


川柳

「はなごえ」とルビをふられる 愛してる


014:段ボ-ル

短歌

段ボールでできた肉から食べなさい 世界はいつか塔になるから


川柳

段ボール巻いて悪寒に備えよう


015:葉

短歌

ナマケモノから渡されるプリントに落書きをするなら針葉樹


川柳

葉もの野菜に切りつけられる


016:紅

短歌

半券が喉の奥まで溜まったら紅白歌合戦をするのよ


川柳

口紅の色を想像してごらん


017:雲

短歌

雲泥の差、タッチの差だよわたしたちあんなに急いで波及したのに


川柳

雲の上の人から順におりてくる


018:泣く

短歌

泣くところ見てる 話は明け方にすると丸ごと土のうになるね


川柳

泣くほどのことではないよ後鳥羽院


019:蒟蒻

短歌

「父親を弑するように蒟蒻を手綱のかたちにせねばならぬ」と


川柳

側溝に蒟蒻畑つまらせる


020:害

短歌

実害があったあとでは遅いからはだかで渡される飾り雛


川柳

害虫をのぼらせている長い髪


021:窓

短歌

眼裏にキュクロープスの禿頭がうつりこむほど窓を磨いて


川柳

薔薇窓が遠くにあってさわれない


022:素

短歌

トロフィーを返さなかったのは素敵 だけど落ち度もいっぱいあった


川柳

味の素 水面に降っていい気持ち


023:詩

短歌

詩ってよく鼻血を出すし、それなのにあたまがいいし、なんかいいよね


川柳

ビフテキを流す詩的な判断で


024:きらきら

短歌

「きらきら」と書いてあるのに 「きらきら」と書いてあるのに 虹のケロイド


川柳

きらきらと嫌儲してもかまわない


025:匿う

短歌

色つきのリップクリーム匿って移動している瑪瑙の子ども


川柳

それでも鳩を匿いますか


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暮田真名
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