『時実新子全句集』を1年分ずつ読むnote #1

若い日の母がちょっぴり邪魔になり
結び目が固くて爪を借りられる
竹光で斬られて母は死んでやり
鏡台にあの日の砂がしまわれる
うちの子がハヤリ目の子と手をつなぎ

『時実新子1955〜1998全句集』より

1955年、26歳の句。65句の中から5句引用しました。
『時実新子全句集』には新子の柳歴2年目であるこの年からの句が収録されています。
親子の関係を詠んだ句が多いです。
ハヤリ目の句はこの状況じゃなければ特に気にしてなかったかも

若い日の母がちょっぴり邪魔になり
邪魔になっているのが「現在の母」ではなく「若い日の母」であるところにひねりがあります。
過去を回想して、現在の自分と同じくらいの年齢だった頃の母の姿と自分を比べてしまい疎ましい気持ちになった、という意味で読みました。

結び目が固くて爪を借りられる
誰か結び目を解こうとしている人がいて、その人では結び目を解くことが難しかったので自分の(おそらくその人より長い)爪を頼られた、という状況でしょうか。
「手」でも「指」でもなく「爪」と限定するところにフェティッシュな気配があり、好きな句でした。

『時実新子全句集』を1日1年ずつ読んでいきます。
44年分あるので44日かかるはずです。

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