呉 恆篤

詩的概念における「あなた」論

呉 恆篤

詩的概念における「あなた」論

最近の記事

無題の手記・一

 この度、急逝した友人の遺品整理をしていたら、様々な原稿が出てきた。当人が生きているうちに出さなかったのだから、世には出したくないのだろうけれど、しかし、私は当人の原稿を捨てるのは忍びなかった。そのままサッとポケットにしまって、幾年かが過ぎた。過日、偶然それを発見したので、ふとした思い立ちで、この場で発表してみようと思う。なかなか面白いことが書かれているので、ぜひ読んでみてほしい。 編者  深夜三時。大学そばのカラオケボックスで歌っていました。サークルメンバーのうち9人で

    • しちがつ

      あなたに会って、 世界が薔薇色に成りました。 真紅に染まった僕の頬、 あなたがした接吻、 その唇の紅で、 更に紅く成る。 文月に成って、 暑い夏がすぐ側に居て、 天使がやって来ては去って、 あゝ、七月だなあ、と思うのです。 こんな日々、いつまで続くのかと、 でもきっと、 そんなこと考えているうちに、 終わるのでしょうね。 今年の春が、そうやって終わったように。

      • 「中島敦」論 「母と子」--母子関係にみる中島文学の原点

        概要格調高雅な文体で知られる中島敦。その母子関係を紐解くことにより、中島文学の原点を探ることを試みる。 序 先日、大学生活が始まった筆者は、海外文芸史という授業を受けた。その回は「中島敦」が主題であったが、筆者はその中でいくつか考えたことがあるので、ここに記しておく。 中島敦とはどのような人物か? 中島敦(1909-1942)は、「山月記」、「李陵」などの作品で知られる作家であり、日本において、格調高雅な漢文体を確立した。現代では高校国語の教科書にも採用されており、その文