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司法と精神医療の充実を DVや虐待への対応として

若年者の人権の話。イジメ、体罰、虐待と考えるうえで最も難しいのはどこなのか、と言えば、虐待、それと親和性の高いDVでしょう。

埼玉白岡の事案

2022年、埼玉 白岡。当時15歳の少年が同居する母親の内縁の夫からの暴行で亡くなりました。その男は生活保護を受給しながら、改造したハイエースを所有(不正受給でしょう)。自分の連れ子と内縁の妻の連れ子のあわせて、8人の子供と暮らしていました。

暴行を受け亡くなったのは上から2番目の子。幼い弟や妹の世話をし、学校にも通っていなかったそうです。男は連日、深夜、バーベキューをし、騒ぎ、これがため近隣住民はたびたび、警察に電話をしていたとか。

また、男は近隣住民を脅かすような態度を取っていたこと、8人の子供のうち、小学中学に相当する子達は学校に通っていなかったこと、学校側も家庭訪問はしていたことなどが報道で伝えられています。

警察や学校といった行政もあるいは2番目の子が普段、男から暴行を受けていることを把握していたでしょうが、残念ながら、今の児童福祉ではこうした子供を助ける仕組みがなく、親は子供を殺しでもしない限り、逮捕されることもありません。

この白岡のケースでは明らかに虐待死なのですが、報道では男が逮捕された、という話も聞きません。さらにいえば、男は内縁の妻にも惨いDV、身体的暴行に及んでいたとか。

こうした事案にどう対応するか。そのことを私はずっと考えています。虐待やDVのこと。イジメや体罰はまだ、介入の余地がある。でも、虐待、それも親が理性を失っていたり、親が反社的な人であれば、どうすればいいのか。

奈良大和高田の事案

2020年4月、奈良 大和高田で40代の中古車販売業の男が逮捕されています。男は義理の孫が通う小学において、義理の孫の同級生の父親である男性に引っ越しと、その男性の子供の転校を強要。やがて、男はその小学校の校長や市の教育委員会の幹部らに恐喝を始め、2017年6月から2019年10月にかけて、累計1億円余りを搾取していたそうです。

イジメや学校事故、教員からのわいせつなど、一般に被害側の児童やその親には辛辣な態度を取る学校、教育委員会。しかし、相手が不良気質な人であれば、どうなるか。その男は校長らに対し、「殴る」「土下座の強要」をもって、臨み、校長らはいいなりだったようです。

2018年、仙台では小学2年の児童がイジメを苦に不登校になります。学校、教育員会に相談していた母親は行政側の不誠実な対応に疲弊し、娘と心中した事件がありました。あるいはこの母親も職員を相手に「殴る」「土下座の強要」をしていれば、問題は解決していたのでしょうか。

話を戻しますと、いわゆるモンスターペアレントに対して、有効な手立てがないのが実態です。大和高田の恐喝は期間が2年半余りに及びました。さらにいえば、その男は逮捕される7年ほど前、義理の孫がその小学校に入学したころから学校にたびたびクレームをつけていたそうです。

報道にはなりませんが、校長ら行政の幹部は早くから警察に相談していたでしょう。しかし、警察は民事不介入でおいそれとは動いてくれないのです。

このあたり、「警察未満」の事案に対応する仕組みを充実させる、そうしたことを私は考えています。

これらはいわば、不良気質な親の話。それから、精神病質な親もいます。2019年1月、千葉 野田。当時、小4の女児が虐待を受け、亡くなりました。

千葉野田の事案

その女児が学校でのアンケートに父親からの虐待のことを書きます。それを受けて、学校では児相に通告、女児は親族宅に保護されるのですが、父親は逆上、学校を訪れ、校長に「事前に親たる自分に連絡なしに、児相に通告するな」と迫り、校長に念書を書かせたとか。

さらには父親は教育委員会を訪れ、娘が書いたとされる、アンケートのコピーを渡すよう迫り、教育委員会の職員はこれに応じてしまいます。そして、父親は娘を親族宅から自宅へと連れ戻し、自宅に軟禁、暴行を加え、女児は命を落とします。

その女児が重篤な事態にあると周囲の大人たちはわかっていながら、誰も彼女を助けることができなかった。殺人事件の半数近くは親族間ではありますが、「法は家庭に入らず」の原則があり、DVでも虐待でも深刻な葛藤があっても、警察は民事不介入でおいそれとは動いてくれません。

虐待の場合、刃物を持った女が児相を訪れ、入口にいた警備の男性の背中を刃物で刺した事件がかつて、ありました。DVの場合、刃物を持った男が元妻と子供のもとを訪れ、殺人未遂で逮捕されています。

こうした事案は「精神医療の対象」といえるでしょう。理性を失い、刃物を持ち出し、危害を加える。実際、DVはメンタルクリニックで治療の対象とされています。ただ、精神科医達はこうした事案に対して、消極的ではありますが。

司法の場合、「この人は将来、犯罪を犯すだろう」とみなして、身体を拘束することはできません。しかし、精神医療の場合、他害、自傷の恐れがあるとみなせば、それは可能なのです。

ただ、残念なことは国、厚生労働省はその分野への取り組みに消極的であり、精神病棟を抱える医療機関も暴れるタイプの患者には関わろうとはしないのが実態なのですが。

不良気質であれ、精神病質であれ、放っておくと、人死にが出ます。その時、犠牲になるのはだいたい、女子供なのです。

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