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木曽で話そう ×暮らすroom’s vol.6 「有機給食の勉強会、お話会」ー長野県中川村の地産地消給食から学ぶー

今回の「木曽で話そう×暮らすroom's」は、中川村の有機給食の取り組みについて、ゲストのお二人にお話をお聞きし、みんなで考えました。
その時間からレポートします!
2024/4/15(月)10時~12時@ふらっと木曽
ゲスト:富永由三子さん(地産地消コーディネーター)
    大島歩さん (中川村村議会議員、大島農園)

富永由三子さんのお話

まず、生産者さんがいないと給食は成り立たないので、慣行農業(※農薬や化学肥料を使用する一般的な栽培方法のこと)と、有機農業のどちらが良いとかいうわけではなく、お互いに否定をしないことが大切だと考えています。
中川村の給食は、実際は有機給食をしているわけではなく、地産地消の給食をしていると言えます。
今、中川村の人口は5千人弱で、中学校に併設された給食センターで、中学校170食、小学校300食を調理しており、中川村の給食の地産地消率は50%ほどとなっています。
正規職員は私のみで、国が人件費削減のために給食の正規職員を削減しているという現状があります。



材料を集めるところから始まる、私たちが知らない給食作りの実際

中川村では、おいしい野菜とどけ隊(生産者)として、30件前後の農家さんがいらっしゃいます。年2回、生産者全大会を開催し、お互いの交流を深めています。
仲介業者は、スーパーまるとしさんにお願いしています。当初、JAがとりまとめをしてくれていましたが撤退してしまい、その後入ったスーパーまるとしさんが今は生産者さんの状況を把握してくれています。毎月、給食の献立を確認しながら、まるとしさんに発注をしています。
スーパーまるとしさんがやってくださることは、発注、集荷、配達、価格決定、保管、管理、品質、規格チェックなど、実に多くのことをやってくださっています。
この循環の中での課題は、交換、返品されたものをどうするかということです。

地産地消コーディネーターの仕事
地産地消コーディネーターは、中川村独自で配置しているものです。
文科省の補助金で、地産地消コーディネーター派遣はありますが、中川村では、教育委員会の嘱託職員として、人件費が付いています。

地産地消コーディネーターは、とにかく畑をまわって、今どんな農家さんがどんな状況かを把握して、それを皆さんに伝えています。
栽培方法、苦労、収穫時期など生産者さんから伺ったことや、年間の野菜の使用データの蓄積等、そして生産者さんご本人のことなど、毎日の献立の写真などとあわせて、メッセージや特集のお手紙で伝えています。
私は、国家資格の集団調理用の資格、食育コーディネーターの資格を保持していますが、資格が重要ではなくて様々な現場を繋げる能力や、理想だけでなく、現場の苦労がわかることが大切と考えています。

食育への取り組み
中川村では、1年に2回くらい、調理員さんが学校で食育の授業を開催してくれ、また栄養士さんからの今日の献立の一口メモは、栄養士さんが20年続けてくれています。
様々な役割の大人が子どもたちに食への考え方、大切さについて教えてくれています。

大切にいただく方法
長野県は様々なものを作っていて、農産物が豊かな土地です。
ある日は、こんにゃく芋から作った手作りこんにゃくを給食にしました(ごぼうとこんにゃくの炒め煮)。
いつかは、村内産の有機小麦と有機米の米粉パンができたらいいな!と思っています。
地域にある加工所は、有機給食をするためのキーとなります。加工所では、様々な作物をペースト加工にします。
りんご、かぼちゃ、とまとなどは、カレーやスイーツ、団子、ソースなどになります。これらはとても需要があります。

現在の課題
現在の課題としては、

  1. 生産者さんの高齢化

  2. 地産地消率を上げる 
     ①少量多品目栽培の拡大 
     ②保存、加工の工夫(保存場所) 
     ③中間業者との連携

  3. 遊休農地の活用 
     給食で足りないものに提供(農政と連携が必要) 

  4. こどもとつながる 
     ①生産者とこどもたちがつながる 
     ②食と農がつながる体験

と思っています。
 

有機給食を行うには 
有機給食を行うには、そもそもの基本として、生産者さんがいる、仕組みがある、給食をつくる人がいるということです。
また、行政の支援(価格の問題など)がどうしても必要で、すべての人たちに信頼関係が必要であると思います。
そして、有機給食の継続の秘訣は、お互いを思いやること。みんなにこにこ、前向きになるよう努めることです。慣行農業、有機農業とお互いに否定せずに、生産者さんも行政も学校も一緒に考えること、そして、こどもを真ん中にお互いにできることを、コツコツと積み重ねていくことが大切です。


大島歩さんのお話「市町村ができること」

次に、中川村村議会議員で大島農園の大島歩さんにお話を伺いました。
松川町を見ると、松川町長が「有機給食をこどもたちに食べさせたい!」という想いを持っており、町が予算をつけています。
松川町はオーガニックビレッジ宣言に手を挙げ、遊休農地の解消のため有機給食のための食材を生産しています。
米一粒ほどからでも、有機給食と掲げることで、結果がついてきます。
長ねぎ、じゃがいも、人参、大根、玉ねぎ、主要五品目をまずは有機にすることから、1歩が始まると考えています。
 
中川村では、有機農業に年間5万円の補助金を出し、土づくり研究会を作って緑肥づくりをしています。
中川村で有機のお野菜を作ってくださっている方は専業農家です。村内の農家さんは50人くらいいます。
持続可能にするためには、生産者も中間業者もつくる方も、安いことばかりを追求せず、にこにこの、つまりみんなが成立する価格設定が大切です。


 

有機給食に向けて

今回のお話会も沢山の方が参加してくださり、2時間では時間が足りないほどでした。
伊那市、箕輪町、木祖村、木曽町から議員1名ずつ、大桑村からは纐纈 悠乃(こうけつ ひろの)議員の呼びかけで大勢の議員さんが出席してくださいました。
木曽町では町の給食担当の方がお二人が参加してくださり、行政の方ともお話を共有できる場となりました。
有機給食は、生産者さん、料理する人、仲介業者さん、行政、食べる人(学校)、すべてが繋がり、お互い理解し、協力体制がないと実現せず、富永さんのような地産地消コーディネータの存在、大島さんのように生産者さんでかつ議員である、こういった方の役割が大きいです。
有機給食が実現することで、子どもたちの健康や安心安全はもちろん、地域に繋がりやにこにこが生まれるのを感じました。今回のお話会で木曽と他地域の繋がりができ、木曽郡内でも地産地消給食、有機給食に向けての動きが生まれていくと思いました。                                 

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