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日が沈むころ、コーヒースタンドが見せる顔 - Kurasu Small Talk #8

Kurasu Small Talk
Kurasuメンバーたちのささやかな日常をお届けするシリーズ。他愛のない会話の中に垣間見えるコーヒーの魅力や、そこから生まれるCoffee Tipsなどをお届けします。

時間帯ごとにコーヒースタンドの表情は変わる

「モーニングコーヒー」と聞いて、何を思い浮かべますか?

なんとなく朝一番に一杯のコーヒーを飲んで、一日をすがすがしい気持ちで迎えるシーンが浮かびませんか。眠いまぶたをこすりながらでも、湯気の立つカップに両手をかざすだけで、一日が始まる準備が整うような気がしてきます。朝が早い日はだいたい8時ごろから、少しゆっくりの日なら10時ごろに飲み始めることもあるでしょう。旅先では、いつもよりのんびりした朝もまた格別です。

ゆったりと朝を迎え、14時ごろになると、再びコーヒーが恋しくなります。
昼過ぎに差し掛かると、コーヒースタンドの周囲も次第に賑やかさを増し、カウンター越しにオーダーを待つ人々の顔には、午後のコーヒーがもたらすほんのりとした高揚感が漂っています。ちょうどその頃には、おやつの時間を楽しむ人たちも集まってくるのです。

その間の時間帯には、移動の途中で寄り道して一杯楽しむ人もいれば、あえて空いた時間を狙ってゆっくり過ごすために訪れる人もいるでしょう。決まったパターンに当てはめられない、多様で自由な街歩きの人々の行動が、今はさらに広がっているように感じられます。そんな人々が一息つきたくなる場所、それがコーヒースタンドなのです。コーヒーを飲むタイミングは、定まっているようで実は自由なグラデーションのように、さまざまな時間帯に染まっているのかもしれません。

薄暗い中で光るコーヒースタンドの窓

夕方に近づくと、不思議と客足も落ち着いてきます。冬の暗さが早まる季節になると、冷たくなり始めた空気の中で、どこか寂しさが漂う夕暮れ時になります。わざわざコーヒースタンドに立ち寄る人も減り、昼間に感じていた「コーヒーを飲みたいな」という気持ちも、時には「今日はもういいかな」と薄れていく日もあります。しかし、朝から忙しく、コーヒー一杯も飲めないままミーティングが続いた一日が終わるころには、「帰りに何か温かいものが飲みたい」とふと思うこともあるでしょう。

その日も、帰り際に夕暮れに染まる京都タワーを眺めていると、急いで帰るのが少しもったいないような気がして、ふと寄り道をしたくなりました。ビル街の中で、薄暗い中に光るKyoto Standの窓がなんとも良い雰囲気を出しています。

ギリギリ、ラストオーダーの少し前に店に滑り込み、ホットカフェラテを頼みました。イタリアの通説的なルール「午後に牛乳入りのコーヒーを飲むべからず」も、京都の夕暮れには少し寛大であってほしいものです。牛乳の甘さが、今日一日の終わりを少し和らげてくれるように感じられました。

ラストオーダーを過ぎると、バリスタたちは少しずつコーヒー器具の清掃に取りかかります。エスプレッソマシンの清掃は意外と手間がかかるのだとか。抽出口には専用の洗剤を使って3回ほどしっかり洗浄し、グラインダーには粉が詰まっていないかを掃除するなど、美味しいコーヒーを提供するための清掃は欠かせないそうです。

その後は、少なくなった備品の補充や、大物の機材やピッチャー、ポットの洗浄。使い込まれたカウンターを布巾で拭き、ホースを洗って清潔にし、最後に外の看板を下げてドアの札を「closed」にする。こうした一連の流れは、毎日、ある程度決まった順番で進められているのだろうなと思いながら眺めていました。

いつもは一日の始まりに訪れるコーヒースタンドですが、今日はこうして一日の終わりを共に迎えることで、普段は見えない店の裏側を垣間見ることができました。丁寧に一日を終える時間の過ごし方に気づかされるひとときでした。

そして思うのです。一日の始まりだけでなく、終わり方にも気を配ることが大切だと。

ただ慌ただしく一日を終えるのではなく、丁寧に締めくくることの重要さ。コーヒースタンドという日常的な場所でありながら、こうした小さな気づきに浸れるのも、店を訪れる楽しみの一つなのかもしれないと感じた寄り道でした。

あ、実はKyoto Standの窓は閉店後もオレンジ色に薄く光っているんですよ。夜は少し暗いので、足元に気をつけてお帰りくださいね。温かな光がそっと見守っています。