「建具替え」という暮らしの知恵
日本の伝統「建具替え」
最近ではあまり聞かない言葉に「建具替え」ってものがある。建具替えっていうのは夏と冬、二回行う部屋の模様替えのこと。
京都では古くから季節の変わり目に建具を取り換えることをしていた。京都は盆地にあるため、冬は冷気が溜まって底冷えするような寒さがあり、夏は山に囲まれて熱気がたまり蒸し暑い。
そんな過酷な京都の環境を少しでも快適に過ごそうとした町民の智慧、それが「建具替え」だ。例えば、夏にはすだれを吊り下げ、障子は紙を張ったものではなく、よしずを編んだ「よし障子」という風がスカスカに通るものに変える。
畳の上には「あじろ」という藤を材料にしたサラサラとしたカーペットのようなものを敷いたりする。または、「油団」(ゆとん)というものを敷く。和紙に亜麻仁油などを何重にも染み込ませてフローリングのようにツルっとした質感に仕上げたものだ。これは全部夏の暑さ対策で、出来るだけ家の中に風を入れ、汗がついてもすぐ拭けるように、そしてモノに熱が溜まらないようにする工夫だ。
冬の場合は真逆のことをする。出来るだけ風を通さないようにする。暖かい空気を出来るだけ建築内に固定する工夫だ。夏に使っていたモノを蔵や物置に収納する。日を遮断し、風を通す建具は秋にかけて寒い。代わりに、紙を張った障子や、絨毯を畳の上に敷く。なんでも、お金持ちの家ではペルシャ絨毯なんかも畳の上に敷いていたそうだ。
今の時代の暮らしの衣替え
今の暮らしって昔のエアコンの無い京都に比べれば快適そのもの。ピッとエアコンをつければいつでもある程度快適な温度になる。あとは服とかで調整すれば1年を通して同じ家具でも問題がない。しかも、築浅の物件なんかだと家自体の保温性が高くて快適そのもの。だから「建具替え」っていうのが徐々に忘れ去られていった。
でも、この時代にあえて現代流の「建具替え」をしてみよう。そうすることによって、今までよりより快適に、さらに季節感も出て、日々の暮らしがグッとよくなるはず。今回は2ステップにわけて我が家の方法をお伝えしたい。
STEP1 床からの冷気を防げ!
我が家はコンクリート打ちっぱなしのマンション。だから冬は壁や床が冷えて、ガンガンに暖房をつけないと底冷えしてた。寒い冬、家の中で一番あったかい物体、それは人間だ。人間の体温は36度近くあり、それと比べればモノはすべて冷えている。熱は暖かい所から冷たいところに移動するので、自分の体温がどんどんと冷え切ったコンクリートに吸収されていってしまう。
特に冬に注意しないといけないのは足の裏だ。夏に長ズボンでも指を出したサンダルとか履いたらすごく涼しいのはみなさんご存知。それは、足の裏や足の指は表面積が多く、また血管も通っているため体全体を冷やす調整をしてくれているからだ。夏は裸足がすごくいい。でもそれが冬、裸足で家の中で歩き回ると、知らないうちにどんどんを身体を冷やす原因になる。対策としては靴下などを履けばいいのだけど、それでも足の裏は体重がかかって靴下の保温する部分も潰れて、さほど暖かくない。
そこでおすすめなのが、まずアルミホットンシート(通称銀マット)2-3畳のものを銀の部分を上にして敷く。これで床からの冷気を遮断。その上に電気カーペットか、それほど寒く無い地域ならピッタリサイズのラグや絨毯を敷く。これだけで床からの冷気がかなり遮断されているのが分かるはず。しかも、絨毯のしたに銀のマットを敷いているので薄いラグでもふわふわのある踏み心地になる。特に自分がよくいる場所にこれをすると一冬の冷えが全然違う事に気が付くはず。
STEP2 冬用カーテンは暖房費節約に
次におススメなのが、冬用カーテンとプチプチを窓に貼る。なんで夏用と冬用わざわざ変えるのか?と思う方がいるかもしれない。でも、冬と夏のカーテンは厚さや素材も違えば長さが違う。まず、素材は厚めのほうがいい。厚手のコットンや、化繊のものがあればベスト。リネンで薄いものはおしゃれだけど冬は我慢。リネン好きも冬は目がしっかりと詰まった分厚いリネンに変えよう。次に大切なのがカーテンの長さ。冬のカーテンは床から、3センチぐらい裾が余るものにしよう。床にドレープが溜まるような長さのカーテンを選ぶだけで窓から床に伝っていく冷気の殆どを遮断できる。これだけで体感温度が変わってくる。
そして、極めつけがこれ。窓にプチプチを貼る。ダサいからいやだ―と思うかもしれない。私もいやだ。でも、暖かい。もし、カーテン、絨毯をやったあとにまだ少し寒いなーと思ったら一回やってみて。効果は確実にある。でも一つ注意。プチプチ安いからといって先にやってもあまり効果がない。まずは絨毯、長い厚いカーテンが先!
今は凄く快適な住環境が揃っているけど、健康にしかも光熱費を抑えるためにも冬前に少し現代流「建具替え」をしてみよう。今回紹介した方法なら冬準備っていっても畳んで段ボール一箱に納まるぐらいの省スペースですむし、春や夏になって収納する時も邪魔になりにくいからおすすめ。
みなさん冬の快適ライフを!