65についてのお話
こんにちは。身近な数字のアドバイザーのナカナカです。
今回の身近な数字は「65」、65歳からの高齢期の消費者トラブルに関するお話です。
来週の月曜日、令和6年9月16日は「敬老の日」です。内閣府によると、「敬老の日」とは「多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う」ための日で、国民の祝日に関する法律(祝日法)によって毎年9月の第三月曜日に制定されました。
最近では、年を重ねても元気で若々しく、多方面に活躍されている方々を見かけますし、何歳以上を高齢者と呼ぶかは難しい問題です。実際、時代や地域によって定義は異なるようですが、現在、世界保健機関(WHO)では65歳以上を高齢者としていますし、わが国でも、65歳以上を高齢者として将来人口推計が行われ、これらの統計を基に社会保障の設計、施策が行われています。
少し古い統計になりますが、公表されている2020年実績値を基に総人口に占める65歳以上人口の割合である高齢化率を国際比較すると、わが国の28.6%は、アジアでは中国の12%、インドの6.6%をはるかに上回り、ヨーロッパでも、スウェーデン20.3%、ドイツ21.7%、フランス20.8%より高い割合ですから、日本は世界一の高齢社会といえます。
さらに日本が世界に誇るべきは、健康寿命に関して高い水準にあるということです。WHO(世界保健機関)が発表している男女を含む出生時健康寿命を比較した2019年のデータでは、日本は74.1歳、健康寿命が長い国の1位にランキングしています。この時点ではスウェーデン71.9%歳、フランス72.1歳、中国68.5歳でした。
健康寿命とは、病気やケガがなく健康に過ごせる期間のことで、健康寿命(平均自立期間)=平均寿命-非自立期間と表すそうです。非自立期間、すなわち健康を損ない自立して生活できない期間が長ければ、生きていることが苦痛に感じられるかもしれませんし、私も高齢者の一人として、健康で機嫌良く長生きできればこれ以上の喜びはないと考えています。
さて、厚生労働省は、令和6年からを「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)第三次」期間として、健康寿命の延伸・健康格差の縮小を目指して身体活動・運動に関する推奨目標を設定しています。例えば、日常生活における歩数では、65歳以上の男女の1日当たりの平均歩数の目標値は6,000歩、運動習慣者の割合は50%が目標値です。運動習慣者とは、1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している人のことです。
高齢者の中には、スポーツジムやヨガなどの施設を利用して運動習慣を身につけ、健康寿命を延ばそうとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、消費者庁は、「高齢者のフィットネスクラブ等での事故が増えています!」という資料を公表し、注意喚起を行っています。ちなみにフィットネスクラブ等とは、スポーツジム、トレーニングジム、スイミングスクール、体操教室、ヨガ教室のように、運動のための器具や設備を備え、会員のための健康管理や体力作りのサービスが提供されている施設のことで、事故情報データバンクには、これら施設を利用した事故事例が多数掲載されています。高齢者以外にも転倒による骨折、擦過傷、打撲傷などのほか、腰痛、肩を痛める事故などが多いのに驚きます。
消費者庁は、フィットネスクラブ等で運動を始めようとする高齢者に向けて、1.骨折リスクなどが高くなっている(ことを認識する)、2.持病がある場合はかかりつけ医に相談して運動内容を決める、3.運動器具や設備の使い方について、スタッフから十分な指導を受ける、4.安全管理が整った施設を利用する、という注意喚起をしています。
さらに、5番目の注意点として、入会前に退会や返金等の契約内容をよく確認することがあげられています。フィットネスジム等の契約関連トラブルが増えているからです。実例をあげれば、運動時にけがをした80代の女性が、ジムに治療費負担と解約を申し出たところ、器具の故障が原因でないため負担できない上、契約は6か月契約なので違約金を支払うように要請された、という例や、90代の女性が、ほとんど利用していないジムの契約の解約を申し出たが引き留められ、プロテインを定期購入させられた、などの事例が国民生活センターに寄せられています。
消費者保護を目的とした特定商取引法では、特定継続的役務提供の定める7つの特定役務(サービス)を対象に、8日間のクーリング・オフ期間が定められていますし、クーリング・オフ期間を過ぎても理由の如何を問わず解約できる中途解約権もある上、関連商品の解約も可能です。しかし、現在のところ、フィットネスジム等の契約は、美容医療サービスやエステティックサロンなどの特定7役務ではないため、原則クーリング・オフはできません。契約は慎重に行う必要があります。
以上の注意点は高齢者に限ったものではありませんが、スポーツジムやヨガ教室などの「無料体験会」という言葉に弱い私などは、くれぐれも気をつけなければと思うこの頃です。
厚生労働省「令和4年版の高齢社会白書」
消費者庁 News Release 令和2年3月4日
事故情報データバンクシステム
国民生活センター報道資料 平成30年10月11日
「解約できない」、「解約料が高額」など、スポーツジム等での契約トラブルにご注意!