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グリルの科学:両面魚焼き機設計:経験実話の紹介

こんにちは。自然大好きアドバイザーE&H(エコ&ヘルス)です。

今回は、昭和45年頃の少し古い話になりますが、現役時代にガスの両面魚
焼機を設計した経験がありその話を紹介したいと思います。

「食」は、日常に欠かせないものであり、食べ物を美味しく調理することは
万人の願いでもあります。約2年かけて開発設計しました。代用特性として
は、基本的な150g前後のアジの姿焼きで、魚焼き前・後の重量差(脱水
率)と中心部の温度測定のデータを設計仕様の決め込みのため、実験を約2
年間ほぼ毎日繰り返しました。

アジの厚肉の中心部に温度測定用のサーモカップルを差し込みます。その部
分が70℃になると焼き上がりです。その前段の知識として「タンパク質」
の凝固温度は70℃ですので、いわゆる焼き魚で火が通るということは中心
部が70℃到達を意味します。焼き上がりの重量減少が少ないほど「ジュー
シーさ」と「うま味の損失が少ない」事が両面焼きのメリットと言えます。
それは、魚の両面に同時に断熱層を作ることになり、内部の水分とうま味を
逃さない働きをもちます。

開発後に中華料理人から聞いた話ですが、中華料理の場合、野菜や肉の煮物
でも最初に中華鍋で食材の表面を炒める事で断熱層を作り、うま味の流出を
封じ込めて味を良くしていると聞きました。開発途上の実験時の実話ですが、昭和43年頃の事ですからクジラ肉が安く購入できたので、その肉を味付けせずに焼いて、焼き上がったものを食味したらすごく美味しかったのです。中華料理の昔からの手法・伝統に一致したと初めて認識しました。その時、「これはいける」と直感しました。予想通り「両面焼き魚焼き機」で焼くと本当に美味しいと多くのお客さんに高評価をいただきました。

いろいろなエピソードがあり一部を紹介しますと、同僚の釣り好きからもこ
れで焼くとほんとに美味しいということで3台も愛用してくれました。東京
の焼鳥屋さんがお気に入りで、これが7台目で、お客さんの評判も高いと聞
きました。愛好家の医者に生産中止を伝えると、現在、営業所の在庫をすべ
て買い集めてほしいと言われ対応した話もあります。また、設計図は残って
いると思うから、必要な資金は出すから再度製造してほしいとも言われま
した。(この実現は無理でした。)

設計の話に戻りますが、お客さんが魚の焼き上がりを判断するのは、表面の
焦げ具合を目で見て判断する方法しかありません。その判断方法で間違いな
く焼き上がる方法を設計に盛り込みました。表面の焦げが適度になった時に
裏面の焦げは少し強めになるようにしました。昔から焼き魚は、遠赤外線で
遠火の強火で焼けばいいという考え方にマッチするよう設計しました。

具体的な構造は、上面はメタリックの網目のバーナで遠赤外線がでます。下
側は、焼くときに油が真下に落ちるので中央部を空けて2本のブンゼンバー
ナを前後に分けて配置しました。新しく発見できた機能があり、焼き網に
アルミホイルを巻いて遮熱版として上下に2枚セットすると、新しい調理
条件が創作できて、ハイブリッドな機能となり、お菓子やいろいろなメニ
ューの料理ができるようになりました。(ロールケーキ、クッキー、プリ
ン、スポンジケーキ、茶わん蒸しetc)

商品名は、「パナグリル」の名称で、幅50cm、高さ30cm、奥行き4
0cmの焼き物専用機でした。この商品を通じて多くの人々に喜んでもらえ
ました。また、大変好評で60万台も販売でき利益率も良く会社に貢献する
ことができました。この仕事を通じて人生の中で貴重な体験をさせていただ
きました。設計から製造、品質管理、販売応援、市場の調査など全般にわた
っての仕事に携わる事ができ、多くの人の力を借りて1つの目標に向かって、事業を成功に導くための実践を人生の生きた教訓として体験することができたのは、私の宝物だと思っています。

私も渓流釣りの魚焼きや簡単な調理を時々しますが、調理は奥が深いですね。皆さんが美味しく調理をするための何かの参考になれば幸いです。

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