しつこい勧誘にろくなものはない
こんにちは。消費生活のウソ・ホントを考えるアドバイザーのゆうりんです。
小さい子どもを抱え、初めての土地で暮らし始めた時のことです。仕事も辞め、人とのつながりは家族、いや、ほぼ子どもだけという日々でした。公園に行くと親子が仲間同士で楽しそうに遊んでいて寂しく思ったものです。
ある時、声をかけてくれた人がいました。地域のこともいろいろ教えてくれて、気さくで優しい。すっかり打ち解け、しばらくすると自宅にも招待されました。ところが家に行くと突然、宗教の勧誘をされて「やられた~」と思いました。適当にごまかし、早々においとましました。
子どもが小学生になった頃。今度はママ友から「久しぶりに話さない?」と誘われてカフェでお茶をしました。近況報告をしていると突然、不思議な力を持つ石の紹介をされました。
「これを手元に置いてから、私はすべてうまく回りだして救われたの。ゆうりんさんにもぜひ使ってほしいのよ」
「でた~」と思いました。怪しいものを売っているという噂は聞いていましたが、勧められたのは初めてです。いくら熱心に説明されても買う気はおこりません。とうとう彼女は「私ではうまく説明できないから、今度上の人と会ってくれない?」と言い出しました。「上の人?」ますます危険なにおい。「私は今、悩みもないから、その石にも興味がないのよ。いつか興味がわいたら連絡するね」とにっこり笑って別れました。
それから年数が経ち、私に病気が発覚しました。隠さずオープンにしていたので、親しい近所の友人が入院前に励ます会を開いてくれました。すると参加していた1人が後日アプローチしてきたのです。
「家族に問題ばかり起きた時に、そこの勉強会に行ってほんとに救われて。ゆうりんさんも一度一緒に来ない?」いくら断ってもしつこく勧めます。
「私は病気になったけど、全く不幸とは思っていないのよ。しっかり調べて、医師の話もじっくり聞き、納得して治療も決めた。なので私は今、そういう場は必要としていないから」と今度も笑顔で断りました。
ところがその後も誘いのメールや電話は続きます。これはもう一度きっぱり言った方がいいと、思いを伝えることにしました。
「いらないという人にここまでしつこく誘ってくるあなたは、すでに普通じゃないですよ。あなたはその会にのめり込んでいるように見えます。迷惑なので、もう二度と連絡しないでください!」
それでも郵便受けに手紙が入るなど勧誘は続きましたが、無視し続けるとやがて連絡してこなくなりました。他の友人が同じ目にあわないよう、今回のいきさつを知らせ、「不幸な話や悩みは彼女にしないように」と言い添えました。
最後のしつこさには辟易しましたが、私はどれも入り口で終わらせたので、その後の世界は見ていません。ただ実際に行ったり買ったりした人の話を聞くと、普通の宗教ではない、怪しいマルチ商法だな、単なる勉強会ではないと、それぞれ思えました。もう一歩進んでいたら厄介なことになっていたでしょう。
こうして振り返ると、悪質商法も勧誘のしつこい宗教も入り口はほとんど同じです。このあと物を買わせたり、高額の献金を強いたりするような宗教だとしたら、悪質商法とどこが違うのかと思います。
私の場合は、1対1での勧誘でしたが、今は子育てサークルを隠れ蓑に、いきなり集団の中に入れられることも多いと聞きます。一対集団では逃れるのが難しくなります。中には激しい勧誘が続き、アドレスも住所も変えなければならなくなった人もいます。
消費者庁が現在「霊感商法等の悪質商法への対策検討会議」を開催し、既存の法律の改正で何とか取り締まれないかと検討しています。マインドコントロールされた人を「判断能力を失った人」と解釈できるかなど、専門家を交えあらゆる方向から解決策を模索しています。ただどのような規制を行っても、法律だけで対処するのは難しいように思います。
会議でも出ていましたが「未然防止」がますます重要になってきます。この場合の未然とは、集団の中に入らないということです。勧誘の入り口でシャットアウトしないとどうなるか、カルト的な宗教の手口も広く周知する必要があります。消費者啓発講座の役割も重要です。
生きていく上で、悩みや不安は誰にでも出てきます。そうした時にふっと声をかけられると、どんな人でも絡め取られる可能性があります。よくわからない誘いは断る。それでもしつこく勧誘されるなら危険度は100%です。やり取りを断ちましょう。「しつこい勧誘」にろくなものはありません。
かつて、困ったり悩んだりした時に多くの人がやってくる有名なお寺がありました。その住職に聞いた言葉です。
「宗教なんて普段は忘れていて、困った時だけ、お願いしますと手を合わせるくらいがちょうどいいんです。寄りかかり、のめり込むものではありません。」改めて思い出します。