食べられる森、フォレストガーデンに行ってきました。
少し前ですが、浜松にあるフォレストガーデンへ見学に行ってきましたのでここで共有したいと思います。
その前にまずはフォレストガーデンについてご紹介します。
フォレストガーデンとは
フォレストガーデンとは、僕が一言で言うと『食べられる森』
フォレストガーデンとは、
自然の中にある様々な生き物たちが集まり、それがもっとも豊富な状態である『若い森』をモデルに、
人の暮らしの為に必要な食べものや、
暮らしに利用できる様々な素材を実りとして最大化しながら、
持続可能性を持ち、その成熟を維持するための森のデザイン手法です。
引用元:The Art of Forest Garden
9つのレイヤー
フォレーストガーデンは全部で9つのレイヤーからなります。
① 高木 Canopy(クリ、クルミ、ヤマモモなど)
② 中高木 Sub-Canopy(ウメ、スモモ、リンゴなど)
③ 低木 Shrub(ブルーベリー、サンショウ、ローズマリーなど)
④ 草本 Herbaceous(アシタバ、フキ、その他野菜など)
⑤ 地覆類 Groud-cover(ストロベリー、ミント、コケモモなど)
⑥ 根菜類 Under-ground(ヤマイモ、ゴボウ、キクイモなど)
⑦ つる性類 Climber(アケビ、キウイ、ブドウなど)
⑧ 水生植物 Aquatic(ハス、マコモ、クワイイモなど)
⑨ 菌類 Mashroom(シイタケ、ヒラタケ、ナメコなど)
この9つのレイヤーが重なりあい、さらに鳥や虫も加わることによって農薬や化学肥料を必要とせずとも畑のように食べ物を生産してくれる森となります。
と、前置きはこれくらいにして浜松のフォレストガーデン見学の様子をご紹介していきます。
浜松のフォレストガーデンへ
いかしあうデザインカレッジ(イデカレ)のメンバーが各地から浜松へ集結。
僕は妻と息子とで参加しました。
高速道路を降りた瞬間、都市化されている浜松の街並みをみてフォレストガーデンがあることが全く想像できませんでした。
高速をおりて車で15分ほど行ったところにフォレストガーデンはありました。
すぐそばに住宅街があり、空には自衛隊の飛行機(近くに基地があるそうです)、バイクレース場が近くにあるのでバイクの「ゴー!!」という轟音も定期的に聞こえてくる。
ちなみにこのレース場の音、天気が悪い時にだけ聞こえるそうです。
理由は風向き。晴れの日と雨の日で風向きがちがう。雨の日の風向きによってレース場の音が運ばれてくるそう。おもしろい
決してまわりは自然豊かな場所とは言い難いところにあるので少しびっくりしましたが、そんな場所でもちゃんと自然の恵みに溢れているのが印象的でした。
みんな集まったところでチェックイン
撮影:romy
フォレストガーデンで迎え入れてくれたのは、パーマカルチャーデザインラボの大村 淳さんと川村 若菜さん。
川村若菜さんはみんなの地球カタログの表紙デザインも担当しています。
フォレストガーデン内も若菜さんの絵が。
まずはチェックインを。みんなそれぞれ、自分の今のコンディション(体調・精神面)と今日収穫したいことをシェア。
チェックインについてはこの記事を参考にしてみてください。
https://greenz.jp/2020/05/19/checkin_checkout/https://greenz.jp/2020/05/19/checkin_checkout/
チェックインすることによって不思議と安心感が。
ツアー開始
まずはフォレストガーデンに隣接している森を案内してもらいました。
ここはもともと放置林だったそう。それを大村さん達が管理を依頼され、少しづつ手入れしているとのことです。
一歩森に足を入れると、別の世界のようでした。
まるでちょっとしたジャングルのようで、すぐ近くに住宅街があるとは全く想像出来ないほどです。
森に入ってすぐにりっぱなエノキの木が。樹齢200年ほどいっているかもとの事。
江戸時代後期に芽生えて、今現在まで生きている。すごい
撮影:romy
浜松は起伏のはげしい土地で、その理由は天竜川という大きな川が作った土地だからとのこと。
実はこの天竜川、僕が住んでいる長野県伊那市と浜松はこの天竜川でつながってるんです。僕が住んでいるところが上流、そしてこの浜松が天竜川の最後の場所。
僕の住んでいるところからは遠い場所がいきなり親近感のある場所になりました。
余談だけど、この上流・下流の視点で自分の住んでいるところを見てみると面白いかも。
撮影:romy
この森は9つのレイヤー全て揃っているそうです。
写真は9つのレイヤーのうちの中高木(サブキャノピー)に位置する犬枇杷(イヌビワ)と呼ばれる野生のイチジクの木。実はめちゃくちゃ美味しいらしいです。
写真は残念ながら雄木。
ちなみにさっき実と書きましたがじつは実ではなくて花だそうです。
また、イヌビワは日陰を好むそうなので日陰の多いところでフォレストガーデンをやる場合は最適な植物です。
撮影:romy
キャノピー、サブキャノビー、シュラブまでが木。それ以降は草の世界になります。 大村さんの右側にあるのがドクダミ。太陽を求めて這い回るグランドカバーと呼ばれる種類。
撮影:romy
少しわかりにくいけど、クライマーと呼ばれる植物でマメ科の藤(フジ)という植物。藤棚(フジダナ)で有名ですね。これ、エディブルフラワーで豆も花も食べられるそう。キング・オブ・クライマーと呼ばれ、キャノピーのてっぺんまで登っていくそう。すごいぞ藤。
クライマーは木に巻きつく植物で、ゆるめに巻く植物もいれば藤のように木を巻き殺していくクライマーもいて、そういったクライマーは人の手でいったん緩めたり剪定したりしているそうです。
撮影:romy
こちらは9番目の菌類。大村さんの足元にあるキノコは実は花や実の位置づけで
本体はその真下にある菌糸だそう。ずっとキノコが本体だと思ってました。
撮影:romy
くだって森を抜けたらまた別の世界が広がっていました。
そこにあるのは里山の風景でした。
なんで昔ながらの里山の風景が残っているのかというと、開発の話があったそうですが地元の人が反対運動をおこしてこの土地を守ったからだそう。
まさに住民達が守り、つないできた土地。こういうストーリーを聞くと土地に対する見方が変わってきます。
撮影:romy
これはウラジロ。
翼のような葉っぱが並んでおり、この時期にしか見られない光景だそう。
葉っぱの部分を切って紙飛行機のように飛ばすこともできます。
そしてこのウラジロは自然界ではサポート役をこなす植物です。
ウラジロの横に生えているのがキャノピーと呼ばれる高木です。
このウラジロとキャノピーは実はお互いがなくてはならない植物だそうです。
仮にウラジロがなかったら雨が降った時、斜面の土が削られて浸食してしまいますが、ウラジロが瓦屋根のような役割をしていて浸食を防いでくれているのだそう。
だから下草がじゃまだからと言って人間が切ってしまうんじゃなくて。それに対するインパクトがどれくらいあるのかという視点で見る必要があるということ。
そのためにはまずは観察すること。
森から出てフォレストガーデンへ
森の中をひととあり案内してもらい森の外へ。
暗い森の中からでると一気にあかるい外の世界でした。
森の中では気にならなかった雨だけど、外に出たらカッパが必要なほど。
木々が雨を防いでくれてたんだね。
撮影:塚崎 淳司
フォレストガーデン自体のデザインとして、太陽が必要な植物はガーデンの中でも南側の位置へ、逆にどちらかと言うと日陰にある程度耐えられる植物は北側の位置に植えられています。
また、乱雑に植えているようで、どの植物がどれくらい大きくなるのかを予め計算して、あえて光が入りやすい距離間まで離して植えているそう。
例えばキャノピーやサブキャノピーなどの大きくなる植物は離して植えてその隙間で草を育てるというようなやり方。
フォレストガーデンはいかに光が入り込みやすいかを考えて作るのが大切なんですね。
またフォレストガーデンで植えられている植物は多年草。例えば筍のように旬になったら食べられるようなイメージです。
撮影 :河合 千尋
フォレストガーデンツアーでは実際に実っているものを収穫して食べることができました。
フォレストガーデンにはさまざまな仕掛けが
フォレストガーデン内は様々な仕掛けがほどこされていました。
例えば、すももの木をイモムシや毛虫から守る仕掛けとして肉食のアブやハチを使う方法。アブは肉食なので葉につくイモムシや毛虫を食べてくれる。
そのアブが好む雑草をあえて刈らずに置いておく。
また、同様に肉食のハチにはビーハウスを設置し住みやすい環境を作っておく。
ちなみにビーハウスとはこんな感じです(実際の浜松のフォレストガーデンのビーハウスは写真を撮り忘れたのでフリー素材の画像を貼っておきます)
そして僕がいちばん感心した仕掛けがこちら
撮影 : 河合 千尋
これは、一言でいうと給水システム。
エジプトの古代パーマカルチャーの技術だそう。
素焼きの鉢を2つくっつけて地面に埋めておく。
底の穴はセメントなどで埋めておいて、上から水をたっぷり入れた瓶を逆さまにしてさしておく。
そうすると素焼きの鉢からじんわりと水が染み出して周りの土壌に給水するという仕組み。鉢の中の水が抜けた分だけ瓶から水が供給されるので、自動供給されています。すごい。
水がない所でパーマカルチャーをする場合はかなり有効なシステムだと思います。
水といえばこの仕掛けもすごいです。
撮影:romy
ファーストフラッシュという雨水を再利用する仕組み。
雨水は降り始めや、降水量が少ない雨は空気の汚れなどが含まれているからそのまま樋(とい)をつたって外に流れでます。
樋の中にボールが入っていて、大量に雨が降った時はそのボールが上に上がっていき、最終的に栓をすることによって雨水の流れが変わり雨水タンクに溜まるという仕組みになっています。
これが雨水タンク
撮影:romy
この一連のシステムはこの動画がわかりやすいので是非ご覧ください。
フォレストガーデンを見学してみて
その他にも色々な面白い仕掛けがあちこちにあり、僕は個人的には『ピタゴラスイッチみたいだ』と思いました。そしてそれは植物や昆虫、鳥などの動物を含めた様々な生態系が機能した結果なんだなと。
また、その仕掛けが機能するためにはまずしっかりと観察しデザインする事が大切なんだなという事がわかりました。
このフォレストガーデンの見学は5月だったんですが、僕はこの見学がある意味転機で、僕の中でパーマカルチャーはとても大きなものになりました。それは妻も同様だったようで、僕たち家族のこれからの生き方をある意味左右する1日でした。
見学ツアーの後はみんなでチェックアウトし、その日収穫した事をみんなで共有しました。フォレストガーデンは見ているだけでワクワクする、僕にとっては遊園地のような所でした。また個人的に来てお手伝いをしたいなと思っています。
それと今回ツアーのきっかけを与えてくれた『イデカレ』はオンラインのスクールですが、こうやってリアルでも会えるというところがユニークだし素晴らしいなと感じました。
最後に、フォレストガーデンの中にあるコンポストトイレの写真を貼っておきます。
これは竹で作られており、ちゃんと外からは見えないようになっています。
この中にコンポストの便器が置かれていました。
また次行った時に実際に使用してみたいと思っています。
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