Bリーグは「地方創生」時代のスポーツ〜初めてのバスケ観戦
今日の「時々、コラム。」は、地域とスポーツについて。
……というとすごく固い話に聞こえますが、「バスケの試合を初めて観に行ったら楽しかった!」というゆるいコラムです。
くらしアトリエ的視点から…というほどのことでもないですが、いろいろ学ぶこともあったので、感想がてら書いてみたいと思います。
島根にはB1リーグに所属している「島根スサノオマジック」があります。ホームアリーナは、松江市総合体育館です。
年末に初観戦。そしてつい昨日、2度目の観戦をしてきました!
ちなみに、スサノオマジックは「島根県唯一のプロスポーツチーム」。
野球もサッカーも、島根にはプロチームがありません。だから、スサノオマジックの試合はすごく盛り上がるし、プライドを持ってる地元ブースター(熱狂的ファンのこと)も多い…と、聞いてはいました。
でも、何となくかつての「地元に愛されながら頑張る弱小チーム」の印象から「ほんとに面白いの?」という懐疑的な気持ちがあって、身近すぎて逆に試合に熱狂する絵図を思い描けず…足を運ぶところまではいかなかったのです。
ただ、私の記憶の中のスサノオマジックは、すでに遠い昔のこと。
実際のスサノオマジックは、「バンダイナムコ」が経営権を獲得してから戦力強化を図り、エンターテイメントに長けた親会社ならではの発信力や演出で、ぐっと魅力的なチームに変貌していました。
「なかなか強いらしい」というのは知ってはいたけど、見たことはない…じゃあ、一度行ってみよう、ということで、観戦を決意。(「コラムのネタにいいな」と思ったことも観戦理由のひとつですが。)
さらに…くらしアトリエの中に「スサノオマジック」ファンのスタッフがいたのも理由のひとつ。「初めてだから一緒に行ってほしい」とお願いをし、12月22日、「群馬グレインサンダーズ」戦の観戦が実現したのでした。
生の試合観戦は、というと…もともとスポーツ観戦は大好きだったのですが、ここ数年はまったくそういう場所に行くことがなかったので、新鮮、かつ驚きがたくさんあって、とにかく楽しかった!
バスケットボールの楽しさそのもの、「スポーツとしての魅力」についてはひとまず置いておいて、試合を実際に会場で観戦してすごいなあ、と思ったのは「魅せ方」。試合「以外」のところでの工夫の部分です。
例えば…試合中に何度もある「フリースロー」。ファウルの際、相手チームに与えられるシュートチャンスのことですが、スサノオマジックのフリースローが決まるたびに音楽が鳴り、スポンサーの名前が体育館に響きわたります。
これがけっこう、耳に残る(笑)。
インターバル(休憩時間)にはスポンサーの看板がオフィシャルチアパフォーマンスグループ「アクアマジック」によって掲げられるなど、手際よく試合の中に広告が差し込まれていました。
こういう演出はすでにパッケージになっていて、当たり前に広告が試合の中で流れ、スポンサーがどんどん前に出てくることで、観客に強く印象付けられるという仕組みです。実際に「へえ、ここもスポンサーなんだ」と思う企業がいくつかあり、ちょっとその会社を見る目が変わったりもしました。
また、室内競技で空間がある程度閉鎖されているので、音響や照明がすごく引き立つというか、もう試合そのものがそれらの効果込みで運営されている、というのも新鮮でした。
チームごとで演出の個性も異なり、それぞれ趣向を凝らしているそうなので、いろんなアリーナで観戦したくなります。
静かに見たい、という人にはちょっとしんどいかもしれませんが(もちろん、静かに見ても全然OK)、専属MCの存在(ラッパーみたいなノリで応援を先導してくれたり、試合が中断した時には状況の説明もしてくれるありがたい方)、そしてド派手な演出や視覚効果というのは、比較的狭い空間でのスポーツならではで、野球やサッカーなどの屋外競技ではなかなか効果を発揮しきれないところかも…と思います。
観客がフラッグを振って応援をする時間帯や、ペンライトやタオルを掲げての応援なんかもあって、このあたりはライブみたいな感覚でした。
「試合」という箱(しかもプロリーグの、真剣勝負の試合)の中に、アイデア次第でいろんなものを詰め込むことができるんだなあ。
「プロの勝負」と「エンタメ」が絶妙なバランスで融合している、というのをひしひしと感じました。
また、昨日の試合は相手の「シーホース三河」さんのブースター席の近くだったのですが、愛知からもたくさんの方が観戦に来られていて、こういうところでの経済効果も少なからずあるようです。
思えば、駅周辺に飾ってあったペナントも、「くにびき大橋」にずらりと並んでいたのぼり旗も、松江駅からいらっしゃる他県のファンの方々の誘導の役割も担っていたのかも!
個人的には、松江を、島根を「いいところだな」と思っていただけるような工夫がもっとあるといいなあ…。もちろん、皆さん試合観戦が目的で、観光したりお土産を買ったりという感じではないのかもしれないけど、「また来てみたいな」と思っていただけるように、松江という街の魅力ももっと伝えていけたらいいなあ、と思いました。
スサノオマジックに限らず、Bリーグは地域密着型。
そもそも、Bリーグ自体が「地域活性化に寄与する」ことを目的のひとつとしているのだそうです。
私たちは日ごろから「シビックプライド=地域への誇り」をテーマに、暮らしという側面から発信をしているのですが、Bリーグのチェアマンも「シビックプライド」という言葉を使ってこれからのリーグの在り方を説明されていて、驚きました。
人口減少の時代に、それでも「街の誇り」になるチームを作ることが、最終的に「この街で暮らしたい」「暮らしてよかった」というところまで到達するように。
チームの存在がシビックプライドの理由のひとつに、なり得る、なり得なければならない、というところが、リーグのテーマの一つとして、ちゃんと掲げられている。さすが、「地方創生」時代のスポーツです。
スサノオマジックが地域でシビックプライドの一翼を担う役割を果たしているのか…これは地域住民やブースターさんが評価をする部分なのかもしれません。
スサノオマジックがあって良かった!と、試合以外のところでも感じられるような関係性作りも、これからもっと増えていけばいいのかな、と思います。
でも、やっぱり「強いチームである」ということが何よりのポテンシャルになるんでしょうね。
ちなみに、私が観戦した試合は今のところ2戦2敗。勝っているスサノオマジックをまだ一度も観たことがありません。それどころか、チームはホームで5連敗…昨日もブースターのため息が聴こえてくるようでした。
あと…余談ですが、すごく驚いたこと。
島根県民って「おとなしい」という印象が(自分が暮らしていても)強いと思うのですが、島根ブースターの皆さん、めっちゃくちゃ大きな声で応援されていました。しかも、MCのコールに対してとても忠実に、統率のとれた応援。
前回は隣に座っている方が(おそらく同じくらいの年齢の女性でしたが)とにかくすごくて、試合中はもちろん全力応援。そして、試合の途中で「アクアマジックと一緒にダンスコーナー」みたいなのがあったのですが、立ち上がってめちゃくちゃ踊っておられました。えー、すご…そんなことできる島根県民、いたんだ…とびっくり。目立たないことが美徳、みたいな地域性なのに…いやあ、バスケって県民性をも変えるのか?と驚くばかりでした。
私はと言えば、最初は「与えられる指示が多すぎて対応するのが大変…」と焦ってしまったのですが、終盤近くなると身体が覚えて、ちゃんとメガホンも叩けたし、フリースローのコールもできました。
自分自身も「みんなと一緒なら大声も出せる」というのを身をもって感じ、なるほど、シャイな人たちにもバスケの試合は応援しやすい仕組みになっているんだな…と、変なところで腑に落ちたのでした。
初心者にもやさしく、楽しく、何よりスピーディーな試合展開が超面白いバスケットボール。地元にチームがある方は、一度観戦してみてはいかがでしょうか?