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陶猫作家ヤマイチアツコさんによる、佐伯祐三の精神が体内に込められた造形の紹介

佐伯雄三は、その才能を惜しまれつつ、30歳のときパリで客死した、夭折の画家です。代表作「立てる自画像」は、佐伯がパリ到着後、ブラマンクに作品を見せ、激しく否定されて挫折を味わい、独自の表現を模索する、画業の転換点に描かれた作品です。

佐伯祐三・作「立てる自画像」 1924年 大阪中之島美術館・蔵
大阪中之島美術館では、2023年に開館1周年を記念して、「佐伯祐三ー自画像としての風景」が開催された1)。会場では、多くの作品が撮影を許可されており、代表作「立てる自画像」も実物を撮影できた。

自画像は、ゆるく、ゆったりと立っていますが、身体の正中線は真っ直ぐにつら抜かれています。そこには、挫折を乗り越えようとし、苦しみに耐えながら変化を受け入れる、柔軟で強靱な意志が読み取れます。

画像は、陶猫作家ヤマイチアツコさんの造形「雲」です。

ヤマイチアツコ・作 雲

像は、胴に雲をまとっています。内部には土鈴が装置されています。その立ち姿は、正中線が保たれ、全体も引き締まり、内面に精神の緊張が感じられるものになっています。

この陶猫は、佐伯が自画像を描いたときの苦悩を突き抜けて、その後、独自の表現を求めて再び立ち上がったときの精神が乗り移っているのではないか・・・と、閃きました。
佐伯の自画像は、顔が削り取られ表情を知ることができませんが、雲猫は、夢や希望を象徴する雲をしっかりと抱えて、前上方を真っ直ぐに見つめています。

100年の時空を飛び越えて、タイムカプセルに保存された佐伯の精神に巡り会い、びっくりしました。

文献
1)高柳有紀子, 富田章, 小川知子 北廣麻貴・執筆:特別展 佐伯祐三ー自画像としての風景, 読売新聞大阪本社,  2023, P25

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