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天野智之・あまじゅんご夫妻の愛猫ルナさんへの鎮魂歌〜クレド岡山・douceにて〜

倉敷本通り商店街にある喫茶ウエダは、倉敷観光の観光客や地元の常連さんのみならず、芸術家や音楽家が多く集まる場所で、さながらパリのモンマルトルにあるカフェのようです。お店の入り口や、レジの周りには、常時、展示会やコンサートのお知らせがたくさん置かれています。
その中に備前焼作家、天野智也さんが関わる展示会の招待状があったので、出かけてきました。

天野さんは、筆者が以前、備前焼ギャラリー・倉敷一陽窯で器を購入したことがある陶芸作家です。他県である愛知県出身であるにもかかわらず、苦労の末に、備前市の山中に、備前焼の窯元を創始されました。

展示会場は、岡山市の高層商業施設・クレド岡山1階のセレクトショップ、douce で、テディベア作家の奥様、あまじゅんさんと共に、個展を開催されていました。

高層商業施設・クレド岡山(岡山市北区中山下)
屋上にはヘリポートが備えられている。

会場で、天野さんに、筆者が展示会に来た経緯についてお話ししていたところ、天野さんが昔から喫茶ウエダの常連だったことを知りました。喫茶ウエダのレジ横には、ずっと以前から、赤い毛氈が敷かれた上に、備前焼の猫が寝ていたのですが、この猫は天野さんが猫好きのマダムに寄贈した作品だったのです!

天野智之さんによる備前焼の猫(喫茶ウエダレジ横)

天野さんは長年連れ添った愛猫、ルナさんをモデルに、猫をモチーフにした作品を制作されてきました。猫の作品をきっかけに、窯元の主力品である器も売れるようになり、ルナさんは、まさに招き猫だったそうです。筆者が以前、倉敷一陽窯で、天野さんによる備前焼の猫を見つけて、喫茶ウエダのマダムの誕生日に贈ろうと思っていた矢先に売れてしまって、残念な思いをした話をして、二人で盛り上がりました。小さな焼き物だったのですが、肉球まで細かく再現されていたのを覚えています。

会場では天野さんの最新作、「つれてってネコ」を購入しました。「つれてってネコ」は宝珠を手にもつ縁起物で、愛猫の代わりにお出かけのお伴をして、旅先で一緒に楽しむための化身だそうです。モデルは、もちろん、天野さんの愛猫のルナさんです。つれてってネコは、後日、喫茶ウエダのマダムにプレゼントし、リベンジを果たせました。

今、「つれてってネコ」は、天野さん寄贈の初代と共に、喫茶ウエダのレジ横に佇んでいます。2体の猫は、モデルが同じなので面影がよく似ています。隣に、冨士山笑呼さんによる竹久夢二の黒猫も加わり、レジ横は、縁起がよい猫のスリーショットになっています。

喫茶ウエダのレジ横(2021年7月11日)

・・時は流れました。クレド岡山内のセレクトショップ、douceにある天野夫婦の常設展示ブースには、いつもと違って、おごそかな雰囲気が漂っていました。

天野夫妻の展示ブース(クレド岡山1階・douce 店内)

聞くところによると、天野夫妻は、1カ月ほど前に,、長年連れ添った愛猫のルナさんを亡くされたのだそうです。
展示ブースは、douce 店主の迫田美加子さんが、ルナさんへの鎮魂を込めて、アレンジされていたのでした。

遺影の代わりに、天野智之さんによるルナさんを造形したカップが置かれていました。

カップに寄り添う茶色のパンダは、奥様の、あまじゅんさんによる、哀しみの表現なのだそうです。隣のテディベアも悲しみ色です。

展示ブースの小宇宙で、ご夫婦の作品たちが、全員でぎゅっと一体になって、悲しみを乗り越えようとしているかのようでした。
(2022年5月7日)


・・さらに、時は流れました。クレド岡山内のセレクトショップ・douceを覗いてみると、天野さんご夫妻の展示ブースにあった、ネコを造形したカップは、新しい持ち主のもとへ巣立っていました。

天野夫妻の展示ブース(クレド岡山1階douce)2022年5月22日

遺された作品達は、皆、きりっとした表情で同じ方向を見つめています。悲しみは乗り越えられたのでした。

それにしても、douce店主・迫田美加子さんの息の長いケアは、すごいな〜。
きっと、とてもやさしい人なのでしょう。

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