カラウマ工房、唐澤博信さんによる、くるみのスプーン
倉敷市玉島のカラウマ工房、唐澤博信さんによる、くるみのスプーンです。柄の滑らかなS字カーブが、機能的に食べ物をすくいやすいようになっています。
唐澤博信さんによる、くるみのスプーン
しかし、その真骨頂は別にありました。食事の道具としてではなく、「柄」自体にヒトの手を惹きつける魅力があったのです。
手でスプーンの柄を握ると、無意識のうちに、保持する中指・環指・小指と、探索する示指・母指の機能が分離してきます。さらに眼も惹きつけられ、注視するようになってくるのです。学問的に言えば、ヒトに先験的に備わった世界の探索機能自体をアフォードする抽象物と言えます*。
検証のために、まだ世界の意味をほとんど知らない乳児にスプーンの柄を握らせてみました。
すると、幼子は、大人の私とまったく同じ手と眼の応答をしました。その後も、スプーンを持ったままで、放り投げることはありませんでした。まさに、何にも染まることのない純粋無垢な人のこころの核心部分、つまり「魂」を惹きつける、この世界の原形といえる逸品なのでした。
*佐々木 正人:新版 アフォーダンス, 岩波科学ライブラリー. 岩波書店, 2015
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