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maruさんの小舟で再現した池田遙邨の世界
倉敷市立美術館は、倉敷出身の日本画家・池田遙邨(いけだ ようそん:1895〜1988)より多数の作品の寄贈を受け、1983年に開館しました。池田遙邨の作品は、入れ替わりで常設展示誰され、また度々企画展が開催されています。この夏も企画展が行われています。
遙邨の作品には、しばしば小舟が登場します。企画展でも2作品が展示されていました。
アーティスト達が集う、倉敷のモンマルトル、アートギャラリー・ビョルンは、倉敷市立美術館から白壁通りを挟んで道向かいにあります。
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倉敷市立美術館の中庭から見た、アートギャラリー・ビョルン
いつものように、精神の保養のために立ち寄ってみると、クリエーターのmaruさんによる新作の小舟の造形が、2点展示されていました。眺めていると、たちまち池田遙邨の世界が立ち上がって来ました。しかも、あの2作品の世界です。
いても立っても居られず、maruさんによる小舟をテーマにして、遙邨の世界を再現しみました、
まず、ひとつ目の作品は、「灯台 Ⅰ」です。岬の丘に、うち捨てられた小舟が一そう描かれ、野辺の花々が寄り添っています。丘の向こうには灯台が屹立しています。うら寂しさと、救済と、孤独とが、ちょうど折り合っている感じです。
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再現においては、岬に見立てたアンティークの台皿をベースにしました。皿の隅には、一本の芦が描かれていて、もの悲しさを誘います。そんな芦の近くにmaruさんによる陶器の小舟を置いてみました。書道芸術家・空奇さんが選んだ猫石を、灯台の代わりに少し遠くに配置してみました。三者が織りなす空気感は、いかがでしょうか。
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二つ目は、「天の川」です。天から流れ落ちるように流れる天の川と、弾力感がある小舟のシルエットとが美しく調和しています。
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小舟の再現には、maruさんによる、銀の釉薬に何度も浸して焼いた、笹舟のような小さな器を置きました。器には、まるで薄い金属板のような、しなやかさが感じられます。天の川は、川の流れを図案化した江戸時代の古布を用いて表現してみました。小舟が置かれている夜の砂浜に見立てたのは、川月清志さんの黒ベンガラ漆塗りのトレーです。3者による質感の美しい調和が出来ました。
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倉敷市立美術館とアートギャラリー・ビョルンという、とても近接した時空で起こったシンクロニシティにびっくりしました。
1)朝日新聞大阪本社企画部・編:「池田遙邨」画集. 朝日新聞社, 1980.
作品目録番号55
2)同作品目録番号37
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