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黒田よし子さんによる絶滅危惧種サーバルキャットの刺繍作品から繫がった時空
刺繍作家、黒田よし子さんは、絶滅危惧種の動物を刺繍作品にしてアクセサリーを製作し、おしゃれの発信と同時に、世の中への啓発を実践されています。
過日(2022.11.16~11.28)、倉敷美観地区のアートスペース路ゞにおいて「黒田よし子 作品展 絶滅危惧種の動物たち-alive-」が開催されました。作品展では、100点を超える絶滅危惧種の刺繍を施したブローチやバッグが展示されていました。
今回は、従来のファッションアイテムに加えて、新しい試みとして、額装された刺繍作品が数点展示販売されていました。
そのなかで、端正な姿のサーバルキャットが目に留まりました。
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サーバルキャットは、かつて北アフリカに生息したチーターよりやや小型の猫科の肉食獣です。
作品に描かれたサーバルキャットは、いつでの動き出せるように前脚を伸ばした座り姿で、特徴である大きな耳を立てて周りを警戒しており、全身の筋肉は弛緩して垂れ下がっていて、瞬時に瞬発力を発揮できるようになっています。
作品には、野生のサーバルキャットの特徴が漏れなく表現されています!
顔を拡大してみると、左眼の瞳が白くなっていて、白内障になっているのが判ります。おそらく、狩りや縄張り争いで眼球を傷つけたのでしょう。まさにこの個体が、「生き馬の目を抜く」環境でサバイバルしてきたのがうかがえます。
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体毛の色は、多種の色の刺繍糸を組み合わせて再現されています。印象派の画家が生み出した、点や短いタッチで描く点描法が応用され、生命感あふれる力強い表情の再現になっています。
刺繍という技法の制約の下で、対象の本質を抽出し、再構成して作品にした、まさに、アート領域の作品と言えます。
作品のサーバルキャットの風貌には、既視感を覚えました。それは、先日、小さな展示会で観た、旅行愛好家の方が描いたベルベル人の顔立ちです。ベルベル人は、北アフリカの先住民で、現在多数派のアラブ人よりも先に北アフリカに定住していました。古代より、異民族の侵入を受け、長く支配下にありましたが、自分たちの文化とベルベル語を守り抜いてきた誇り高き民族です。鼻が高く目が大きいので、日本人から見ると西洋的な顔立ちに見えます。
ちょうど、倉敷市立美術館では、「東郷青児・斎藤真一展」(2022.10.22~12.18)が開催されています。展示会を楽しみ、会場で購入した東郷青児・作品 収蔵品目録(SOMPO美術館)を見ていたら、「ガルダイヤの少年」を発見しました。
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ガルダイヤは、北アフリカのアルジェリア中部にある都市で、描かれている少年は、その顔立ちから、ベルベル人に違いありません。その誇り高き風貌は、野生のサーバルキャットと通じ合います。
ベルベル人の居住地域とサーバルキャットの生息域は同じなので、彼らはサーバルキャットと共に生きていたことでしょう。
黒田よし子さんの志から、次々と繫がってくるシンクロニシティにびっくりです!
文献
1)中島啓子(SOMPO美術館)・編:収蔵品目録 東郷青児 作品. SOMPO美術館, 2016, P52(作品195)
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