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横山直樹さんによる自然練込の備前焼
備前焼作家の横山直樹さんは、備前の原土を生かした「自然練込」により、土器のような素朴な風合いの作品を生み出しています。茶人による美意識改革によって見出されることとなった、桃山期の「古備前」に近い物です。
土の精錬と熟成に膨大な手間と年月を要し、ひび割れて焼き上がる物が多いために、焼成も困難を極める方法ですが、それを乗り越えて再現されました。1)
画像は、横山さん作のビアマグです。濃厚な土の風合いがある器肌で、一方の外縁が平坦で、もう一方は膨らんだ形をしています。ろくろを使わず、手びねりで造形するので、器の形が非対称なものになっています。
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手に取ると、しっくりと馴染みます。
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それは、枯れた土の感触に加えて、人の掌の身体性にぴったりと適合したものだったからで、とても惹かれました。
1)坂戸亮介:横山直樹「備前の土」が持つ“時間”を表現する. 炎芸術No. 125 特集・備前薬の新世紀. 2016春. P24-27