天野こうゆう・さんによる土人形「フランケンシュタイン」の深い意味〜伝説のセレクトショップdouceにて〜
小説「フランケンシュタイン」は、科学者フランケンシュタインが生命の創造に魅了されて、当時の最先端技術であった化学と錬金術を駆使して人造人間を作り出す物語です。
いつしか巷では、この人造人間のことをフランケンシュタインと呼ぶようになりました。モンスターが登場するオカルト小説と思われる事が多いのですが、生命とは何か、生きているとはどういうことか、を問いかける文学作品としての一面があります。
岡山市の高層商業施設、クレド岡山1階にある伝説のセレクトショップdouce(ドゥース)を覗くと、僧侶であり、クリエーターである、天野こうゆう・さんによるモンスターの土人形が展示されていました。モンスター達はどれもおかしみと愛らしさがあります。
そのなかで、筆者は、フランケンシュタインの土人形に目が行きました。
何故かと言うと、首の付け根にあたる部分に孔があったからです。・・医療関係者であれば、すぐに「気管切開孔」が思い浮かびます。
気管切開は、気管に孔を開けて気道を確保する外科処置です。多くは救命処置として行われ、また、長期に人工呼吸器管理が必要なときに実施されます。
集中治療室ICUを経て回復期リハビリテーション病棟に移ってくる患者さん達の中には、気管切開をしている人が少なからずいます。それは、最先端の科学技術の力を借りて、すさまじい、生きるための戦いをくぐり抜けたしるしと言えます。
これまで映像化されてきた「フランケンシュタイン」には気管切開孔がありませんでした。この土人形は、こうゆうさんがフランケンシュタインをモチーフにして、19世紀初頭の科学技術を21世紀の科学技術に置き換えて、命とは何か、生きるとはどういうことか、を問いかけた作品ではないか、と深読みしました。
伝説のセレクトショップdouceの展示作品は、意味が奥深いです。