藤原康彦・葉子ご夫妻の立体額絵〜その3
倉敷市本町のみうち雑貨店は、岡山のクリエーターを応援しているお店です。
店内で、岡山市の木工房ねこの手、藤原康彦・葉子ご夫妻による立体額絵の最新作が目に留まりました。
場所は北極です。北極の氷山に特徴的な、尖った氷山が見えます。北極の氷山は、グリーンランドの氷河が縦に崩壊して、海に流れ出してできたものなので、氷山の表面が複雑に切り立っていて、光を乱反射します。それを、木のテクスチャーで見事に表現してあります。
ちなみに南極の氷山は、ゆっくりと海に押し出されて、崩壊しないためにテーブル状になり、光の乱反射は少なく、白い壁といった感じになります。
氷結した海の上では、一頭のホッキョクグマが空を眺めています。空が帯状に赤みがかっているのは、オーロラでしょうか。私たちは、オーロラは緑色だと思い込んでいますが、条件によって、赤やピンクや紫になるそうです。
ホッキョクグマは、高さ2cmの小さな像ですが、ホッキョクグマの特徴を抽出した、似顔絵とも言うべき造形です。
ホッキョクグマの毛並みは、細かな木の木目を使って表現されています。頭は、鼻が長く、耳が小さく作られており、寒冷地に適応した熊の姿です。
首は長く、四肢は、後脚の太ももが発達し、後ろ脚で立ち上がる熊のプロポーションになっています。
額の正面からは見えない首筋や前足もちゃんと彫り込まれています。細部にとことんこだわった作り込みに、思わず見入ってしまい、しびれてきます。
このホッキョクグマは、ひとり、何を想うのでしょうか。哀しみでしょうか、寂しさでしょうか、好奇心でしょうか。あえて眼を彫り込んでいないところに、匿名性があり、想像を掻き立てられました。