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嚥下障害の病態解釈における昭和な話〜チューリップ〜
90歳代男性の、嚥下造影検査の時のことです。この男性は、食物が咽頭から食道へ向かう通路の、梨状窩と呼ばれる部分に特徴がありました。梨状窩は機能的に左右に分かれ、それぞれがロート状の形になっていて、流れ込んでくる食物を受け止めて、食道の入り口へ送り込む役割をしています。
男性が造影剤を飲み込んだ瞬間の透視画像(頸部)
透視画像を見ると、左右一対の逆三角形をした梨状窩が黒く映し出されています。この男性は通常よりもロート構造の入り口部分が拡がっていて、土石流のように流れ込んでくる食物の塊を効率的にたくさん受け止められ、それによって誤嚥を免れているようです。
筆者はこの適応的な形の変化を見て、とても感心して、思わず、「チューリップですね!」とつぶやきました。同年代の放射線技師は、即座にこのメタファーを理解して、くすっと笑ってくれましたが、若いSTはきょとんとしています。「チューリップって、パチンコのチューリップのことだよ」と説明しても、さっぱりわからない様子でした。
他のスタッフに訊いてみると、平成生まれのスタッフは誰も知りません。その後も訊いて回ると、昭和60年 (1985年)生まれが境界になっていることが判りました。昭和60年以前に生まれた人は、パチンコをしたことがなくても、チューリップのことを知っていました。
チューリップ、それはとても昭和な香りの風物でした。
※男性本人に画像を見て確認してもらい、同意を得てアップしています。
追伸
医療従事者を対象とした予防接種の問診をしていて、20代の女性で、漢字二文字で「カレン」と読む人がいました。サポートしてくれていたアラサーの看護師に「たぶんこの女性のお父さんが、恋するカレン、が好きだったんだろうね!」とつぶやいたのですが、わかってもらえませんでした。