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岡山・成羽町、川月清志さんによる枯山水の椅子

岡山・成羽町の工房川月、川月清志さんによる椅子です。

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材料には、軽くて頑丈な落葉樹の栗材が使われています。

椅子の脚は3本で「三脚」になっています。三脚は、カメラの脚立が三脚であるように、どのような平面にも設置することができます。

重さが数キロまでしかないカメラと違って、椅子はヒトの全体重を支えないといけないので、木製の椅子は通常、脚の間を連結して補強がしてあります。しかし、川月さんの椅子には、この連結補強がありません

どうやって脚を座面の板に固定しているのかというと、板に脚の木材より小さな枘穴(ほぞあな)が彫ってあり、脚がわの先端を細くした枘(ほぞ)と高精度に結合してあります。

川月さんの椅子改訂

そうして、体重をかけることで板と脚とが圧着され、結合が安定するようになっています。

表面は、日本古来の顔料である希少な黒ベンガラで漆塗りが施されており、品位ある落ち着いた仕上がりとなっています。

川月さんの椅子は、椅子として最小限のパーツから成り立っており、究極的に洗練化されています。喩えるなら「椅子の枯山水庭園」と言えましょう。

座ってみると、脚が座面の板と直結してあるのと、少し外に開いた脚がたわみむことで、椅子全体の硬性が高まり、ダイレクトに床反力を感じることができる構造になっています。

座った人はそれを坐骨で受け止めて、自分が大地に支えられて生きていることを再認識することでしょう。

また、先に述べたように、椅子だけで安定を得るのではなくて、人が座ることで安定し、椅子と人とが協力し合って作動する(縁を結ぶ)構造になっています。

川月さんの椅子は、座る人に、自らのあり方・生き方を問いかけてくる、精神性を研ぎ澄ますための媒介となるものです。それは、「椅子に座る座禅」のための道具と言えるのではないでしょうか。

もちろん、軽くて持ち運びし易いので、日常の生活でも使い勝手がよいのは、言うまでもありません。その姿・形の美しさに、所有する喜びがあります。


追伸

座禅を組むときには、お尻の下に座禅専用の座禅布団をひきます。川月さんの椅子には、倉敷本通り商店街・ギャラリーメリーノの清水繁子さんによる、手縫いの柿渋染めの座布団が、大きさ、風合いともぴったりです。

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この座布団は、日本酒を絞るのに使った木綿の酒袋を再利用した、侘び錆びた精神性が感じられる逸品です。倉敷美観地区の老舗カフェ「エルグレコ」の店内でも使われています。

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*扉の画像は、創作家・池田順子さんによる、暖簾です。遠くへと、どこまでも続く、一本の路が表現されています。Art  Space 路ゞの、石原路子さんにエールを贈るために捧げられた作品です。Art  Space 路ゞは、川月さんのような誠実な作品作りをするクリエーターを応援しているお店です。


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