三宅木工房の雛人形における記号性と言語性
画像は、岡山市の三宅木工房による雛人形です。無垢の木を使って、抽象的な雛人形を表現しています。
従来の、きらびやかに装飾された、いにしえの男女像をかたどった、具象的な雛人形と異なり、時空を超越した男女が抽象表現されていますので、記号として扱うことができます。
人が使う記号体系の代表的なものは、「言語」です。言語は、記号の関係性(文法・文脈)のなかで意味を生成します。言語は、記号をある制約のなかで自由に組み合わせて、無限の意味を生み出すことができます。さらに、言語は、現実世界を記述するだけでなく、仮想世界も創成します。
そんな、言語的な記号性をもった、三宅木工房の雛人形で、仮想世界の関係性を表現してみました。
いかがでしょうか?私たちは、記号の関係の中に、どうしても意味を見出してしまい、それを止めることができません。
哲学者のカッシーラー*は、人間とは、シンボル(抽象記号)を操るものであると定義しました。私たちは、記号を創り出し、記号を組み合わせ、記号の関係性の中に意味を生み出し、現実を越えた世界を立ち上げます。
三宅木工房の雛人形は、その意味で具象的な雛人形を越えた、人間の本性に問いかけてくる造形作品です。
*カッシーラー・著(宮城音弥・訳):人間 シンボルを操るもの. 岩波文庫 青 六七三ー五, 岩波書店, 1997
追伸
3月3日、ももの節句を祝いました。お雛様のシンプルさが美しく映えました。
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