みうち雑貨店
倉敷市本町の「みうち雑貨店」は、岡山出身の工芸家や芸術家を応援しているお店です。
もともとは、店主、山下泉さんの父母が、それぞれ理髪店と美容室を営んでいた、棟並びになった店舗でした。お父さんが高齢でリタイアして理髪店の方を閉め、のちに亡くなられたのですが、数年して母娘で相談して、理髪店だった空き店舗を雑貨店に改装したのだそうです。
隣では、80歳代のお母さんがまだ現役で、美容室(みうち美容室)を営んでいます。
山下さんは、人を引き立たせる仕事をしていた両親の血筋を引き継いで、自らの目利きで才能のある若い作家の作品を仕入れています。
「みうち雑貨店」(左)と棟続きの「みうち美容室」(右)
原 在加(はら・ありか)さんは、山下さんが推している陶芸作家の一人です。下の画像の右側は、原さんによるオリエント風な味わいのお茶碗です。筆者には、肥沃な土の色と図案化された神秘的な模様が、チグリス・ユーフラテス川流域に栄えた古代文明の栄華を表しているように思えました。
シリアはかつてユーフラテス川を擁し、「文明の十字路」として栄えました。画像・左側の刺繍は、シリア紛争のなかで生活基盤をほぼすべて失ったシリア人女性達が、針と糸で収入の道をひらくために製作した刺繍です。彼女らが独自に、伝統的な陶器の壺アンフォラをモチーフにしてデザインしました。
壺は、図案化されていると共に、非常に明るくカラフルで、彼女らの伝統文化に対する誇りと精神の強靱さを感じました。刺繍は岡山市立オリエント美術館で購入することができます。シリアの伝統文化と日本のオリエントへの憧憬が、こうして岡山で共鳴し合ったのでした。
追伸
アンフォラは、古代ギリシャ・ローマにおいて用いられた陶器の壺で、ブドウ酒やオリーブオイルなどの保存・運搬に用いられました。長い首と膨らんだ胴が特徴で、二つの垂直の取手が付いています。
シリア女性による刺繍をよく見ると、取手にリングが縫い込まれています。「つながりが切れないように」、という女性達の願いなのでしょう。当院・通所リハビリ部門の女性スタッフが発見しました。