藤原康彦・葉子ご夫妻による立体額絵〜その1
倉敷市本町のみうち雑貨店は、岡山のクリエーターを応援しているお店です。
店内で、岡山市の木工房ねこの手・藤原康彦・葉子ご夫妻による立体額絵が目に留まりました。
絵は、5層の平面によって構成されて、遠近感を出していました。すなわち、手前の低い丘、奥の高い丘が分離していて、その間に雲が3層に分かれています。
その表現方法に、かつて東京で見た、ピエール・ボナール作「黄昏(クロッケーの試合)」1) を思い出しました。
ピエール・ボナール展を特集したテレビ東京系列の番組「美の巨人たち」2) によれば、ボナールは若い頃、舞台美術の装飾を手がけていていました。その経験を応用して、舞台の「書割(かきわり)*」のように、この作品を10層で構成していて、客席から絵の世界を覗いているような、独特の遠近感を体験するようになっているとのことでした。
*書割:背景などを平面的に描いて設置される大道具のこと
ボナールの作品と同様に、藤原さんの立体額絵にも、舞台の世界を覗き込むような感覚を覚えます。
文献のあとに「追伸」があります。
引用文献
1)オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展:2018年9月26日〜12月17日 国立新美術館
2)美の巨人たち ボナール『黄昏(クロッケーの試合)』日本かぶれの画家の新絵画 テレビ東京 2018年11月24日(土)22時00分〜22時30分
3)イザベル・カーン他・著:オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展. 日本経済新聞社, 2018. P43
追伸
藤原康彦さんの作品の特徴は、木の本来の色を大切に生かしていることです。例えば、低い丘の草地や木々の緑は、使われている木、本来の色です。雲も着色されておらず、木の白さです。
絵の額には橙色の木が使われ、背景には白木が使われています。絵をダイニングテーブルの上に置いていたら、朝になって日の光がリビングに射すと、額の橙色が白木に映し出されて、絵の景色も朝の情景になります。
夕方になると黄昏の陰影が現れます。
一見シンプルだが奥が深い、とても素晴らしい作品です。