二代目はしなやかに生きている
民家脇の路傍に、雑草のオニノゲシが生えていました。二株のオニノゲシは、背丈も形も相同で、双子のようによく似ています。
雑草には、競争に強く、他の植物を押しのけてはびこるイメージがあります。しかし、実際には他の植物との生存競争に弱いので、人間によって他の植物が取り除かれた、更地などの競争のない環境の隙間(ニッチ)を見つけて、いち早く住み込む柔軟性を生存戦略にしています。
雑草は、種が落下した時期、土壌、水分、日当たり、などに素早く順応して成長しますから、それらのわずかな違いによって、多様な姿になります。ですから雑草の姿は、ニッチの環境を忠実に映す鏡です。
二株のオニノゲシは、遺伝子が同じだからではなくて、たまたま同じ時期に、同じ環境に芽吹いたために、一卵性双子のようにそっくりな姿になったのでした。
先日、喫茶ウエダで老練な開業医の院長と話す機会がありました。その時の話題の中で、病院や医院の二代目は総じて人柄が良い、という話になったのを想い出しました。初代は、頑固でクセがあり、いわゆる、やり手で辣腕を振るっていたにもかかわらずです。
路傍で見つけたオニノゲシが気付かせてくれるのは、二代目というのは、実は、初代から家業を継承して規定の路線に乗るという、選択の余地が少ない「硬い生き方」なのではなくて、二代目という狭いニッチに懸命に住み込んだ、柔軟な生き方をしてきた人達なのだということです。
だから、総じてみんな似ている(人柄がよい)のだと。
追伸
急に、かつて山口百恵が歌っていた「しなやかに歌って1)」を思い出しました。
山口百恵は、芸能界を引退して、その後、二度と復帰することはなく、ひとつのニッチに住み込みました。彼女は、しなやかに懸命に生きた人なのでした。
1)作詞 阿木燿子 作曲 宇崎竜童 1979
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