アレックス・バナヤン著『The Third Door』ー 自ら扉を叩き続けた挑戦の記録
『The Third Door』は、青年アレックス・バナヤンが自らの可能性を広げるためにあらゆる手段を使い、著名な人々との出会いを通じて自己を探求した実話です。彼は、一般的なやり方ではたどり着けない人々と会うため、さまざまな方法でアプローチを試みます。その執念が彼を成功へと導きました。最初は淡々とした内容かと思いましたが、読み進めるうちに、私自身の経験と重なるところが多くあることに気づきました。
私の「第三の扉」との出会い
25年前、私は単身でアメリカに留学しました。現地の大学に正式に編入するため、アレックスと同じように、ありとあらゆる扉をノックし続けたのを覚えています。私は彼のように有名人に会うわけではありませんでしたが、異国の地で「どんな手段を使ってでも目標を達成する」という強い意志は、今も鮮明に覚えています。
当時、どの大学に入るべきか分からないまま、私は「とにかく名門大学を」と考え、IVYリーグの学校ばかりを見ていました。コロンビア大学を見学した際、教授から相手にされず肩を落としたことや、ミシガン大学から不合格通知を受けてどうにか合格できないかと交渉したこともあります。夢の大学に進学するのは簡単ではありませんでしたが、少しでも道が見えた先には、いつも自らアプローチしていた自分がいたのです。
異国の地での奮闘と挑戦
大学入学後も、私は「挑戦し続けること」の大切さを知りました。単位を落とさないよう、500人以上が集まる大講堂で授業が終わると必ず教授に質問をしに行きましたし、少しでも編入単位を多く認めてもらうためにアカデミックアドバイザーと何度も交渉しました。また、学期休み中にも単位を取得しようとUNでインターンをしながらCUNYでの授業を受ける手続きをしました。
当時はメールが主流ではなかったため、マンハッタンで家を探しながらも学部の秘書に電話をかけてCUNYにファックスを送ってもらったこともありました。何かを成し遂げたいと思ったとき、必死で扉を叩くしか方法はないということを身をもって学んだ時期です。バナヤンの言う「第三の扉」、つまり通常の方法ではなく自ら可能性を切り開くその姿勢が、この本を通して蘇りました。
「第三の扉」という概念
バナヤンは、一般的な正面玄関(First Door)やVIP専用の扉(Second Door)が使えなくても、何か方法があると信じています。それが「第三の扉(Third Door)」です。バナヤンはその扉を叩き続け、裏道を駆け抜け、窓を越え、最終的には目的地にたどり着きます。
この「第三の扉」を使うことは、決して特別なコネクションがある人だけに許されたものではありません。バナヤンは自分にはコネクションもなく、ネットワークを拡張するスキルもない状態で出発しました。自分の出身や周囲の状況に関係なく、自ら行動を起こすことで人生の可能性を広げることができる、そんなメッセージが込められています。
誰にでも訪れる「第三の扉」のチャンス
この本は、「自分には何も特別なものがない」と思っている人にも、きっと勇気を与えてくれるはずです。バナヤンのように、周りに頼れるコネクションがなくても、目の前の機会を逃さずに必死で取り組むことで新たな道が開けることを示しています。かつて私がアメリカで体験したように、未知の扉を叩き続けることは、新しい自分を見つけるきっかけにもなるのです。
日本でも反響を呼んだ「The Third Door」
日本でも『The Third Door』は多くの反響を呼びました。たとえば、昨年末には日本でのイベントも開催され、こんまりこと近藤麻理恵さんとバナヤンが登壇しました。おそらく多くの日本人が、この本に触れることで「諦めずに扉を叩き続けることの重要性」を改めて感じたことでしょう。バナヤンが出会った著名人の中で、特にラリー・キングやクィンシー・ジョーンズとの会話は、私にとっても強く響くものでした。
まとめ ー 挑戦することでしか見えない景色がある
『The Third Door』は、ただ有名人に会うための方法を示すだけでなく、「人生のチャンスは自ら切り開くものだ」という強いメッセージが込められています。自分には何も特別なものがないと感じている人や、自分の環境に不満を持つ人こそ、この本を手に取ってみてほしいと思います。
バナヤンの実話は、決してスムーズにいかない現実の中で、それでも希望を見出す方法を教えてくれます。どんなに難しい状況でも、自分自身がその扉を叩き続けることで、必ず新しい道が開ける。そのことを改めて教えてくれる一冊でした。