いきなりの5歳児
どこかの誰かに見つけてほしい、とイナホは思っていました。
でも、自分に自信がないので、だれにも言わずに物語を書いていました。
知っているのはいつも隣で寝ているクララだけです。
「イネちゃん、今日は何を書くの? ムギちゃんのこと}とクララがパソコンの横のFAXの上から言いました。
クララはイナホのことをイネちゃんと呼ます。妹のムギちゃんがそう呼ぶからです。
イネちゃんは、クララにムギちゃんの話をします。。
イナホとムギはおばあさんの姉妹です。
でもムギちゃんはある日突然、五歳児になってしまいました。
からだも小さくなったような気がします。
朝から、アンパンマンを見て喜んでいます。
「どうしたの、ムギ?」
「あたしはムギちゃんよ、イネちゃんの孫よ。この子は妹のクララよ」
ムギちゃんは、自分が本当に五歳になったように話します。猫のクララを妹だと言います。
「クララちゃん、おやつをあげようね」と抱っこしてクララのおやつのところまで連れて行きました。
「ムギちゃん、あたしはチキンじゃなくてカツオが好きなのよ」
「イネちゃんカツオだって、あげて!」
うそでしょ、ムギちゃんとクララがしゃべってるよ!
「なに、驚いているのよ、イネちゃんとだって話してるじゃないの」とクララが言いました。
「そうだっけ?」
「いつも、ムギちゃんがトイレで失神してるの教えてあげてるでしょ!」
「あっ、そういえば、イネちゃん起きて、って言われてたような?」
「でしょ……❣」
一生懸命、鳴いてるから、そう聞こえるだけかと思ってた!」
「オイ、イナホ、しっかりしてよ」
へえ、クララってしゃべるんだ! すごい。