お前が死んで喜ぶものにお前の文体の舵を任せるなの呼吸 壱の型
積ん読になっていたアーシュラ・K・ル=グウィンの「文体の舵を取れ」を読み始めました。こんにちは、ふじおーです。今日で39歳になりました。いい数字だ。3の倍数ってなんか好きなんだよ。
誕生日という何かを始めるには良い日というきっかけもあり、数日前に見かけたフィルムアート社の記事で存在を思い出したのもあり、文体の舵を取ってみることにしました。
記事では主に合評会で進めることを中心に書いているが、読んでみるとル=グウィン大先生は「書き手としての自分自身の声を見つけるいちばんの近道は、ひとり静かに打ち込むことなのだ。」と書いているし、実際一人で取り組む際の手順も書いてる。であるから、誰かを誘うのが億劫だったり友達が少ないことを後ろめたく思わず、堂々と文体の舵を取っていく所存である。
で、初回の課題は以下
問1で「脚韻や韻律は使用不可」とあるのは、お前が書くのは詩ではなく散文だ、程度の意味らしい。書いてみたのが以下。
回答1
コッ、と口蓋で舌を鳴らした音が校舎に響く。反響する。エコーロケーションというやつだ。目の見えないわたしの視覚を補ってくれる。壁の形状、床の材質、だいたいなんでも分かる。わたしの腕を引いている友達の立ち姿も、頭の中に音像で浮かぶし、その細かな表情さえも取りこぼすことはない。
だから正直、助けなんていらないのだ。そう何度言っても友達はわたしの腕を引くことをやめてくれない。見ていてヒヤヒヤするからだ、と友達は言う。自分が安心を得たいだけの自己満足なんだよ。悪いけど付き合ってよ。そんなことを言われて、そこまで言うなら、と了承してしまった。でも、正直うんざりしてきた。
悪いなら付き合わないよ。今度はそう言ってみよう。
回答2
思わず出た声がしわがれていたことに驚いて、彼は目を見開いている。声が、男とは思えない可憐な声が彼のアイデンティティだったのだ。声変わりによってアイデンティティが奪われようとしたとき、彼は己に話さずの誓いを立てた。それが今、破られた。不意に持ったボールペンを、手が白くなるまで力を込めて握りしめる。その先端が喉に向かう。彼の喉に、黒いインクで点が打たれる。赤い雫がぷつ、と丸く浮き上がる。
初回は以上だ。自分が書いたものを解説したり客観的に見たりとかは書いた直後は難しいので、次回読み返して反省点とか良かった点とかあれば書く。では、さらば