メイビー前回の続きである。直前までエルデンリングで影の地を散策していたのだが、気が狂ったお爺ちゃんが頭に刺さった棘を首ごと引っこ抜く場面に遭遇してしまった。そのすぐ後に書き始めているため、今回の記事でどこかおかしい部分があれば全てあのお爺ちゃんのせいである。留意して読んでほしい。
前回の課題を振り返る。お題は繰り返し。語句の繰り返しは己のリズム感が許すなら好きだし、構成上の反復だったら「うまく機能する反復を書き始める前に思いつけたら実質勝ち」と思っているくらい大好きなので楽しく書いた。過去の作例で反復を使っているもので言えば、ピンクの象を考えないがある。メインキャラクターが死に戻りするという設定のため、ものすごく反復している。未読の方は読んで俺の反復好き具合を確かめてほしい。
同じ語句を最低三度繰り返せというお題である。暑すぎて夏をテーマに書く気しか起こらずにこういう内容になった。そういうテーマの選び方は短絡的すぎて嫌なのだが、暑すぎる気温は俺に妥協を許容させる。繰り返している語句は「紐」で、紐のような水着、シートを固定する紐、視界にちらつく紐のようなもの、ヒモ彼氏と、四度登場している。今読み直して思ったが「紐」という概念の柔軟性が高すぎて(6部で主人公のスタンドに採用されるだけはある)頻出しても「また出てきたな?」感がすごく弱い。もっと強度の高い語句を選択したほうが良かった。紐のような水着と書きたくなりすぎたのが悪い。
構成上の反復を書けというお題。最初にロウソクが吹き消され、最後にもう一度ロウソクが吹き消される。小話としてまとまっていて良いんじゃないでしょうか。死神が百物語に参加するという出落ちでしかない気もする。まぁ良いでしょう。ただ「あてくし」は味付けが濃すぎる気がする。そこまでせんでもええんではないかと小生は考えますが、いかがでしょうか。
さて、本日のお題は「形容詞と副詞」である。今までル=グウィンせんせーは「文章は長くても良い!」「単語は繰り返しても良い!」と割とフリーダム寄りな主張をしていたが、この段になると〈血を吸うダニ〉や〈本当にでかいダニ〉や〈大型のイタチ〉〈脂肪〉などと、文章を無駄に肥え太らせるパーツを躊躇せず罵りまくっている。よっぽどいけ好かないんだろう。
なので、こんな課題になる。
回答
音は聞こえていなかった。胸を震わす振動だけを感じていた。
スターターピストルの引き金が絞られる。破裂音が大気を伝わり、走者の鼓膜を震わせた。
腕が振り上げられ、上体が起こされ、グラウンドは蹴られた。聞こえていなかった音が、聞こえるようになった。足音。歓声。風の音。
隣のレーンを走る選手を突き放す。腕も横顔も後ろに流れていき、四秒で見えなくなった。
集中するほど、視界が狭まる。針穴の点の中に、グランドに引かれた線が見える。先頭を走って、あの線を越える。そのために腕を、足を、肺を動かす。走りながら、笑っていたような気がする。細胞の一つ一つまで連結しているのを明瞭に感じる。体の全てが支配下にある。
なのに、足の裏が裏切った。地面から離れるタイミングにズレが生じた。生じた綻びが、弾ける。動きが一体感をなくす。連結が外れる。点になっていた視野が、広がる。見えるようになった領域に、他のレーンの走者が侵入してくる。
許せない。叫んだ。腹から、口から、全身で。全身で叫ぶことで、一体感が戻ってきた。連結はまだ嵌まらない。だが眼前には目標のラインが迫っていた。
間に合え。腕も足も、放り投げるようにゴールに飛び込む。
勝敗は分からない。納得出来ない走りだったことだけが、分かる。
今回の舵取りは終わり。もし見逃して副詞や形容詞を使ってしまっていたらそっと指摘してください。そっと直します。