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私たちが注目している日本酒市場のポイント

a) 国内市場は3分の1に縮小。でも高単価へ

日本酒の最盛期は今から50年前の1973年です。その後、日本酒離れが続き、現在では生産量が当時の3分の1にまで減少しています。一見すると日本酒人気が低迷しているように見えますが、実際には日本酒離れだけでなく、市場の需要が変化していると考えています。最盛期の主流であった普通酒の需要は低迷しているものの、原材料や製造方法にこだわった特定名称酒の需要は伸びています。つまり、日本酒市場の低迷は、市場が好む日本酒のカテゴリーが激変したことが原因と考えられます。

b) 毎月3蔵の廃業。でもスタートアップが登場

国内には約1,200蔵といわれる酒蔵が存在していますが、実際に稼働しているのはその3分の2から4分の3程度と言われています。国税庁の「清酒製造業の概況」によると、毎月約3蔵が廃業しています。日本酒を製造するには製造免許が必要で、新たな免許は発行されていません。つまり、新しい製造免許を取得して清酒をつくることはできないのです。

しかし、休眠酒蔵の復活、会社継承、「その他の醸造酒製造免許」の取得などを通じて、米からつくる醸造酒を製造する事業者が増えています。特に、熱い想いを持って事業を開始するスタートアップの数は増加しています。

c) 海外発の酒蔵がぞくぞく登場

「日本酒」とは、日本で醸造された米からつくられるお酒を指します。一方、海外で製造されたものは「SAKE」と呼ばれます。このSAKEを製造する酒蔵は、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ベトナムなど、世界各地で登場しています。その数は50を超すとも言われています。

日本酒の約80%は水で構成されています。日本の水は軟水傾向にありますが、世界各国には個性的な水があります。これらの水と日本の醸造技術が組み合わさることで、SAKEはそのバラエティの幅を広げています。これにより世界中で日本酒やSAKEの楽しみ方は多様化し、新たな魅力を発見する機会が増えています。

d) ワインと日本酒の共存

ワインと日本酒は、消費者の財布と時間を奪い合う異なるカテゴリーのアルコールだと思われることがありますが、共存するアルコールととらえているソムリエは少なくありません。ワインに合う料理が日本酒に合わない場合もあれば、逆にワインに合わないけれど日本酒に合う料理も存在します。このように、ワインと日本酒はそれぞれの特性を活かした棲み分けが可能です。

例えば、キャビアやホワイトアスパラガスなどの魚卵系の食材は、ワインと一緒に食べると鉄分の味が強調されてしまい、ワインの天敵とされています。しかし、日本酒の場合、アミノ酸の効果によってこれらの食材の旨味が引き出されます。実際、ワイン王国であるフランスでも、日本酒の知識と経験がトップソムリエにとって必要とされています。

e) 日本酒 / Sake 市場は顕著な伸び

日本酒の国内市場は出荷ベースで約4,350億円、小売ベースで約6,100億円と言われています。一方、輸出は約410億円〜約470億円です。Fortune Business Insights によると、市場は 2018 年に 73.5 億米ドルと評価され、2026 年までに 104.7 億米ドルに達すると予測されています。

f) 歴史上、最高品質の日本酒

昔の日本酒と今の日本酒は、品質の面で大きく異なります。伝統的な醸造技術は年々、磨かれながら継承されていること、精米設備の技術が格段に上がっていること、醸造設備が緻密に設定・管理できるようになったこと、保管への意識が高まりインフラが対応できるようになったことなどが挙げられます。「歴史上、最高品質の日本酒」と好評する雑誌があり、また「今の日本酒を飲める至極の幸せ。今の日本酒を知らないことは本当にもったいない」と語る専門家もいます。これらの意見は、現代の日本酒がいかに優れた品質なのかを物語っています。

g) 少量化の流れ

日本酒の酒質が向上する一方で、容器のサイズも重要な要素となっています。特に、1,800mlや720mlの瓶は、飲む人にとっては大きすぎると感じられることがあります。一度開封すると、飲み切るのが難しいと感じる人も少なくありません。そのため、720mlからさらに少量化が進むことが求められています。

少量容器への移行は、日本酒の認知度を高め、関心を深めるために不可欠なトレンドです。消費者にとって手軽に楽しめる少量の日本酒は、試しやすく、結果として需要の拡大につながると考えられます。このトレンドが進むことで、日本酒がより多くの人に親しまれるようになるでしょう。

h) 日本酒瓶の不足、欧州での規制


ここで注目すべきは、容器に関する課題です。コロナ禍を経て、日本酒瓶の需要と供給のバランスが崩れ、現在では日本酒瓶の供給が不足しています。そのため、従来の瓶が不足し、他の仕様の瓶を使用せざるを得ない銘柄も出てきています。

さらに、2024年3月には協議中の欧州の包装規制によって日本酒瓶による日本酒の輸入が禁止になる可能性があると報道されました (その後、対象から外された)。それでも、リサイクルの視点から世界市場での日本酒販売促進を考えると、欧州の規制に対応した容器の選定は必須の課題として明確になっています。

これにより、日本酒業界は新しい容器の選定やリサイクル対応を進める必要があり、持続可能な方法での販売促進が重要となるでしょう。

i) 国内外でアルミ缶日本酒の登場

日本でのアルミ缶日本酒には、実は50年の歴史があります。最初に販売されたのは、菊水酒造様の「ふなくちシリーズ」で、以降様々な改良が進められ、常温で楽しめる生酒の提供など、知恵と技術が詰まった日本酒缶が展開されています。現在は、自社でアルミ缶商品を提供し始めている酒蔵が増えてきました。

2021年には手軽な日本酒を広げるため複数の酒蔵の銘柄をアルミ缶で商品化し販売を開始したスタートアップが登場しました。2024年には日本酒イベントを運営する事業者がインバウンド向けに高級アルミ缶日本酒の販売を開始しています。これらの新しい供給体制から、日本酒缶市場の急成長が期待されています。

以上になります。

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