愛とはどんなものかしら
例えようもないほど美しく、限りなく広がっていて、独りきりで、全ての境界が曖昧で気が狂いそうな世界に戻りたかった。
わたしはずっとその世界に魅せられて、そこで生きていくのだと思っていて、でもそこでの居場所を見つけられなくて、現実の居場所を探していた。
求めても求めても、与えられない答え。
その代わりに与えられる哀しみと失望。
憎しみや哀しみや孤独、そんな「負」と言われる感情は、わたしを大海に押し流す。
足の下は底知れず、確かな筈の地面は爪先にさえ触れない。
それなのに。
わたしはそれでも安全で、守られていて、この命を失うことはない。
何もわたしを傷つけることはできないし、わたしは何にも脅かされない。
その確信が何の熱も持たず、ただ傍に寄り添う。
このあらゆる哀しみも、苦しみも、楽しむために、味わうためにきた。
こんな想いなのだと、絶望し、流れなくなった涙を流して泣きながら、歓喜に酔うように。
感情が途方もなく揺れ動くのは、確かにいま生きているから。
この苦しみも哀しみも、全てがわたしの組成分。
愛しいと心から思えたから感じることのできる、得難い体験。
ずっとこれを知りたかった。
これを、いつかの夜に心から願った。
次は本当に愛し合うことを知りたい。
お互いがお互いを同じ重さで想う、常に寄り添い、離れ、お互いの足で立って向き合う愛を。
この世界で愛し合うことを。