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漂う静けさに浮かび上がる『美』:曼殊院門跡

こんにちは

京都市左京区一乗寺エリアの詩仙堂から十数分歩いたところにある曼殊院門跡。

同じ数寄屋風建築でありながら、そこに漂う雰囲気はまるで異なっていました。
開放的な詩仙堂、そして落ち着いた佇まいの曼殊院門跡。
その違いだけでも興味深く感じているところです。

ということで、
今回は曼殊院門跡での体験をお話していきます。

お付き合いくださると嬉しいです。


|曼殊院門跡を知る

まずは、曼殊院門跡ってどんなところなの?ということから知っていこうと思います。

「門跡」とは、寺格の一つで皇族・公家が住職を務める特定の寺院、または住職のこと、を指しています。

曼殊院で見られる欄間や引き手、釘隠しなどの意匠(デザイン)が桂離宮と共通している点が多く同じ作り手(工房)が製作に関わったとされていることから「小さな桂離宮」とも言われています。

曼殊院ポストカード
各部の意匠
富士山の釘隠し/扇子型の引手

興味深いのは近い時期に良尚親王の兄 智忠親王が桂離宮を作ったこともあり、曼殊院の造設には兄からの助言を受けたであろう黄金比(1:1.61)が取入れられたとされています。

床の間や中庭など長方形に目を向けてみると、これがそうなのかな、なんて思ったりします。

延暦年間(782~806)、宗祖伝教大師最澄により、鎮護国家の道場として比叡の地に創建されたのが曼殊院のはじまりである。
その後、天暦年間(947~957)是算国師のとき北野天満宮が造営されると、是算国師が菅原家の出生であったことから、初代別当職に補され、以後明治維新まで900年間曼殊院は北野別当職を歴任した。
天仁年間に北野天満宮管理のため北山に別院を建立。その後御所内公家町に移転し、明暦二年(1656)になり、桂離宮を創始された、八条宮智仁親王の第二皇子良尚法親王が入寺され、現在の地に堂宇を移し造営されたのが今日の曼殊院である。

曼殊院門跡オフィシャルサイトより引用

また曼殊院と言えば、大書院と小書院の南面に広がる枯山水庭園

大小三つの中島が築かれ、鶴島や亀島といった松が目を引きとても特徴的です。奥の築山から広がるように石組が配され、そこから流れる川のように白砂敷が敷かれ、禅宗寺院の枯山水とは異なる宮廷風の枯山水を見ることができます。

この庭園は、小堀遠州が作庭に関わったと言われていましたが、明暦の移転は遠州の没後であったことから、当時の門跡であった良尚親王の好み(宮廷風の意匠)が作庭に反映されているのではないかとも考えられているようです。

|水辺に居座るような

さて、ここからはボクの体験話をしていきます。

曼殊院門跡は数奇屋風の書院として代表的な日本建築の一つと言われています。
確かに、一歩内部に入り込むと息を吞むような緊張感と静けさを感じます。

ただ、緊張感や静けさというのも「怖さ」ではなく、どちらかというと「襟を正す」的な身も心も整えてこの建築と向き合おうという気にさせる、と意味です。

あとは曼殊院門跡を訪ねた日は曇りがちな天候のため、日の差込よりは拡散された光が内部をうっすらと照らす状況がよりそう感じさせたのかもしれません。
けれど、曇りならではの拡散する光によって、金箔を施した襖絵あるいは木など経年から表れた時代のツヤ光に反応し、ボンヤリ浮かんできます。

そうした現象が曼殊院の意匠の他に格式のような深みをさらに強めていたのではないかと思います。

曼殊院ポストカード
左:小書院/右:八双窓


もう一つ感じたのは、まるで水辺に居るような感覚です。
曼殊院は書院南側に広がる枯山水庭園が見所ですが、そこに至るまでには坪庭のような小さな枯山水があります。

枯山水は「見立てる」ことで自然の事物を表現した庭。白砂利が(海、川など)で波紋が流れを表しています。

ですので、回廊を歩く、というよりは向こう側に「渡る」ような感覚になるのかもしれません。
そう思うと、外に面した「開口部」(障子越し)や庭に面した「欄干」越し腰を降ろしてみると、水辺に居るんじゃないか、そんな気持ちにさせてくれます。

そしてやはり伝統的な日本建築では、腰を降ろし書院空間や庭園空間を体験すると色々見えてきます。

引き戸の引手の高さ、絵画の高さが座った時に丁度良くなっていたり、腰を降ろしただけで、書院の部屋が大きく感じます
また庭園の川のような流れも低い視点の方が臨場感が出ます。

ぜひね、適度に立ち止まり腰を降ろして見渡してみてください。
きっとユカ座の文化の面白さに気づけるかもしれません。

ということで、
この辺りで失礼します。

ここ曼殊院門跡も紅葉の名所と言われています。
新緑と合わせて体験してみたいなと思うところです。

それではここまでご覧いただきありがとうございました。

ではまた


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倉嶋 洋介
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