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⑭本末転倒とはまさにこのこと

9月に入り、大学の長い夏休みが終わった頃、サービス業を営む企業の最終面接に挑んだ。
いわゆる「秋採用」に突入してしまっていた。

学生1名に対し、面接官が3名。
やはり、役職が高いであろう年配男性達を前に面接が行われた。

志望動機や学生生活について尋ねられ、無難に回答し穏やかなひとときとなったが、あくまで面接はふるいにかける場である。
最終面接で不合格となった苦い経験を忘れず、気を引き締めて臨んだのだった。

そして、「これは選考には直接関係ないんですけど」という前置きの後、最後の質問が投げかけられた。

「うちは給料安いけどやっていけますか?一人暮らしだと大変だけど大丈夫ですか?」

もちろん、給料は多くもらえるならそれに越したことはない。
確かに、募集要項の給与金額は決して高くはなかった。

給料が高い仕事には、おそらくそれなりの理由がある。
しかし私は、そこにチャレンジする意欲も能力も持ち合わせていなかったのである。

それでも、なんとかなるだろうという額だったので応募するに至った。

まさかここで、「無理です」といったニュアンスの回答をしてしまえば、これまでの過程が全てパーになってしまう。

また、いちからエントリーシートを作成して面接に呼ばれるのを待つには時間がない。

数秒後、私の口からは思ってもいない言葉が出てきたのだった。

「私は楽しく節約して生活することが趣味なので、いただいたお給料で工夫して一人暮らしを楽しみたいです。」

もちろん、節約が趣味だと思ったことも、実践したことも一度もない。
そしてもちろん、節約が楽しいものだと思ったことも、感じたことも一度もない。

内定欲しさに「盛って」しまったのだった。

しかし、あと少しで手の届く内定を逃したくない。
この先、同じチャンスは二度と来ないかもしれない。

これでよかったのだ。
そう言い聞かせ、面接会場を後にした。

数日後、その企業から内定の連絡があり、ようやく就職先が決まったのだった。

嬉しさよりも、「もう就活をしなくて済む」という安堵の気持ちの方が強かった。

つづく






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