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ときどきエッセイ  もっと簡単に人生ルートが変更可能になったらいいのに、という話

1 ルート変更が困難な社会  大学院の修士課程にいる女性に、「大学院は主婦向けのカルチャーセンターじゃない」と腐したツイートが炎上している様子。炎上するのはもっともで、勉強したい人が勉強して何が悪いんだと思うのだけど、せっかくなのでずっと前から感じていることを書いておこうと思う。別段、目新しい意見ではない。大学にしろ、大学院にしろ、一度社会に出てからそこに戻ってくるルートがもっとたくさんあればいいのにね、ということだ。  今の日本の閉塞感の理由の一つに、一度選択した人生ル

    • ときどきエッセイ  18世紀の人生すごろく   ヴォルテール『カンディード』

       ヴォルテールの『カンディード』を読んだ。古典新訳文庫(光文社)、斎藤悦則訳。古典新訳文庫はKindleunlimitedのに入っているのがありがたい。いつでも気が向いた時に、これまで名前しか知らなかった名作を読むことができる。  読み出して驚いたのは、とにかくペースが速いこと、タッチの軽いこと。カンディードは気立のいい貴族の若者なのだが、始まって数ページで育った城を追い出され、軍隊に捕まって棒叩きの刑を受け、戦場に駆り出されて逃げ出し、物乞いになって窓から便器の中身を浴び

      • 「道徳」の時代の反自己啓発的啓発書  ベンジャミン・クリッツァー『21世紀の道徳』を読む  (ときどきエッセイ1)

        1 ベンジャミン・クリッツァー『21世紀の道徳』(晶文社)を読んだ。啓蒙の書である。科学的知識や学問的知見を、専門分野にとどまることなく、広くわかりやすく読者に届けようとしているくらいの意味だ。そこでは同時代で普遍的な関心を呼ぶような事柄が議論されている。一般的な新書も、専門家が一般人向けに書き下ろすという点で似た部分があるが、大抵の新書は専門知にとどまって、それほど普遍的な論点にまでは至らない。  『21世紀の道徳』の基本的な構えは、私たちは道徳的な問題を論ずるとき、で

        • 毎日エッセイ2 12月2日〜9日

          「毎日エッセイ」を終えて  2週間毎日短いエッセイを書いてみようと思って始めた「毎日エッセイ」も昨日で14回目を迎えた。2日ほど書かなかった日もあった(どちらも水曜日、水曜日は忙しいのだ)ので、2週間と二日かかったことになる。  最初は本当に書けるか少し心配していたのだけど、それほど苦しくはなかった。エッセイを書くぞ、という気持ちでいると、自然に何かが思い浮かび、時間さえ作れればなんとかなるということがわかった。執筆時間はだいたい1時間くらい。長文の場合は2時間くらいかか

        ときどきエッセイ  もっと簡単に人生ルートが変更可能になったらいいのに、という話

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        • 毎日エッセイ2 12月2日〜9日

          毎日エッセイ1 (2020年11月24日〜30日)

          11月30日  住んでいる場所からさほど離れていないところに国道16号線が走っている。首都圏の大動脈で、大型トラックが次々に通り過ぎる。片道3車線ないし4車線。ロードサイドには大規模な量販店やモール、ファミレスなどが点在している。 『国道16号線スタディーズ』という本を読んだ。塚田 修一・西田 善行編、青弓社、2018年。出版社からもわかるとおり、社会学系の本である。  目次を開くと、関東地方の白地図に黒黒と太い線で16号線が描き込まれている。横須賀から始まり、町田、八王子

          毎日エッセイ1 (2020年11月24日〜30日)

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