ドラムサークルによる人事研修
2016年4月、新入社員研修でドラムサークルを実施しました。新入社員60名ほど。多くは理系の技術者です。研修会場になった講堂に入ってくると、円型に並べられた椅子とタイコにどよめきました。タイコは西アフリカのジャンベという手で叩くタイコや、ドラムサークルを推進しているアメリカのremo社がドラムサークル用に作ったタイコです。タイコの他にもシェイカーやベルなどの小物楽器が並べられています。この雰囲気だけでもワクワクするのです。
ファシリテーターはペッカーさんです。他にドラムサークルファシリテーター協会からサポートスタッフが入ります。サポートスタッフはベース系の低音のタイコを叩いて、リズムをキープするのです。
各々好きなタイコを見つけて席につかせます。最初は自由に叩きます。ドラムサークルには叩き方に楽譜はありません。好きなように叩けば良いのです。ただベースのリズムに合わせた方が気持ちが良いので、スタッフの叩くベースに合わせて自然にビートは合ってきます。
ほどよく場が温まってきたところで、ペッカーさんが輪の中心に登場してファシリテーションを始めました。ドラムサークルはアクティビティと言われるプログラムを組み合わせて実施されます。
研修なので、タイコを叩くだけでなく、スライドで講義も行いました。講義のあとは、プラスチックの筒状の楽器「ブームワッカー」を使ったアクティビティです。ブームワッカーはアメリカ生まれの楽器。調律されたカラフルなプラスティックチューブで、パーカッションのように叩いて音を出します。これを使って、色ごとに違うリズムパターンで叩くのです。色ごとに音程が違うので、重なり合うとアンサンブルになります。ブームワッカーを叩きながら講堂内を行進しました。これはチームごとに合わせることで全体の調和ができることを暗に学ぶのです。
最後は、シェイカーを使って「シェイカー テイク アンド パス」というアクティビティを行ないました。これは各自の左手の上にシェイカーをおき、右隣の人に回していくというものです。どうすればシェイカーを落とさずに早く回せるかを考えるのです。このアクティビティは、仕事の流れや流れ作業、共同作業、創造性、ボトルネックなどの理解を目的としています。
60人が輪になって床に座り、シェイカーを回します。最初はすぐにどこかに滞って(ボトルネック)、落としてしまいます。どうしたら続けられるか?皆で考えます。号令をかけて回そうという提案がでました(創造性)。声を掛け合って回します。うまく回り始めました。それでも落としてしまい、なかなか1周しません。別の改善案が出て、やっと1周回るようになりました。そこでこれを工場のラインとみなして、「社長から生産効率を上げましょうという指示がありました。さあ、どうしたら早く回せますか?」と指示をします。皆でいかに早く回せるかを工夫していきました。
シェイカーを回すだけの作業ですが学びは多いのです。座学は記憶に残りにくいが、体験は記憶に残ります。これも「音楽の力」のひとつです。
(つづく)