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今年もまた冬がくる

また冬がくる。
モンブランを食べながら
あなたを思い出す冬がくる、。

人が心を閉ざす瞬間を目の当たりにしたとき
心がぎゅっと押し潰された。

君の第一印象は儚い雰囲気を纏った人、だった。
時折見せる寂しそうな目が印象的な人、。

君は最初からたくさんの話をしてくれて
その話を聞くことが大好きだった。
でもそのお話のなかで引っかかることが
何度かあった。

「私ね、優しくなんてないの。
大切な人が怒っている時は
その子以上に怒っちゃうし、
悲しんでる時はどっちが悲しいのかわかんないよってくらい泣いちゃうし。
でもそれを人は優しいというでしょ?
違うの。そんな綺麗な感情じゃないんだよ。

面倒なんだ。嫌なことも忘れられないし、
あぁしまったって思うこと、たくさんある。
毎日考えちゃう。本当に面倒な人。」

『それだけ考えられるって素敵だよね。
どっちが正解とかないし、
うみちゃんは優しいから。
私は逆。まぁいっかで終わらせちゃうから。』

君は何だか寂しそうな声でそう言った。

君はよく私を褒めてくれたよね、。

『うみちゃんは真っ直ぐだよね、。
芯があるから真っ直ぐぶつかってきてくれて
誰にも見せずに努力して
強そうなのに凄く涙脆くて優しくて、
そういうところも好きだよ。

求めてることを自然としてくれるから
救われるんだ。
元気にさせてくれるよね、心の拠り所だよ。』

君の声は優しいから。
いつも私の胸にスッと入り込んできて
私の方こそ元気をいつももらえるような
そんな存在だった、。

でもいつからか君の様子がおかしくなった。

時折見せる寂しそうな目をいつもするようになった。

何だか聞いてはいけない気がして、。
すぐには聞けなかった。

1週間後、見るに耐えなくて聞いたことを今でも覚えてる。
その瞬間にスイッチが切れたかのように
君の声は落ちていった。

でも、きっと、あの時誰かが聞かなければいけない状態だった。
そうじゃないときっと君はずっと苦しんだから。

いつも肝心なことを言い訳になってしまうから、と悩んで言えない子だった。
誰にも話せないことをいつも私には話してくれていて、
聞いたことのない声で君は淡々とこの期間の話をしてくれた。

あの時の寂しい目や
私に聞いてくれたことの意味が
やっと全部繋がって、。
どうして気付けなかったんだろう、って
私は静かに泣いた。

『どうしてうみちゃんが泣くの?
何でうみちゃんはいつも代わりに泣いてくれるの?』

君は私にそう言ったけど、
普段涙を流さない彼女は
私の為に私が涙を流せない時に
何度も綺麗な雫で頬を濡らす子だった、。

それまでずっと聞いたことのない声で言葉を紡いでいたけど
『ありがとう』と言った声は
私が大好きな優しい声だった。

それから君は何も話さなくなった。
あの出来事で心を閉ざしてしまった。

人見知りな彼女は何故か私とはすぐ何でも話すような仲になって
『うみちゃんみたいな子に出会ったことないんだあ』と無邪気な笑顔で言ってくれたのを
今でも覚えてる。

あまり人前で笑わない彼女は
いつも下を向いて笑う子だったから。
私は君の笑顔が見たくて
今思えば特に面白くもない話をしたり、
たくさん笑っていたと思う。

そんな面白くもない話を聞いて
私の笑顔を見て
いつも下を向いて笑っていた。

数ヶ月後、君は少しずつ、少しずつ、
変わっていった。
もうあの時の君はどこにもいなかった、。
私が知っている君もどこにもいなかったんだ。

下を向いて笑う君はもうどこにもいなかったし、
私が知っている声で話す君もいなかった、。

でも、何だか心が決まった顔をしていた。
夢なんて無い、と話していた君は
もうどこにもいなかったんだ。

だから私は知らない君を見れることが
嬉しくて喜ばしいことだと感じたの、。
前進したんだ、と思った。

人づてに
『うみちゃんに甘えてしまうのが怖い』と聞いた、。

だから私は祈ることしかできないけど
いつか、また話せたらいいな、。

その時はお揃いのトレーナーじゃなくて
新しく買ったトレーナーを着ていくよ。

きっと君はまた
『その服かわいい。どこの?』って笑うから、。

だから私もあの時とは違う笑顔で返すんだ。

「おかえり、おつかれさま。」

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