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同人音声の企画制作での落とし穴と「性癖のぶつけ方」

※このポストはC101で頒布した『同人音声を100倍楽しむための同人音声の作り方』中の記事「企画構成でやること」の内容を大幅に加筆・修正したものです。

同人音声サークルのくらげランプです。

この記事の元になった本を書いた2022年ごろって音声作品の数がめちゃくちゃ増えてる雰囲気があって、「同人音声業界崩壊しそう → 荒波に飲まれる前に現状を形にして残そう…😇(終活)」みたいなことを考えてたんですが、全然いらない心配でした。音声作品を作りたい!という声をまだまだ耳にします。それから音声作品作るの楽しいけど難しい!という同業者さんの声も。

というわけで、あくまでもくらげランプはこういうふうに音声を作っています、という話でしかないのですけど。何かのお役に立てば幸いです。

(この記事ではだいたい男性向けR18音声を念頭に置いています。)


同人音声は性癖だけで作れる

同人音声はシンプルです。おおまかに言えば台本・イラスト・ボイス・音声編集の4つさえ用意できれば作れる。

しかも、大半のサークルさんではイラストとボイスは外注になるはずなので、最低ラインとして要求されるスキルは本当に少ないです。

音声を作るにあたって本当に必要なものって、性癖をぶつけることだけじゃないでしょうか。実際、このサークルができたのも、同人音声好きのフォロワーと性癖話が盛り上がった勢いの結果なので……。

と、同人音声は性癖だけで作れる!……とは思うのですが。だからこそ、それってちょっぴり不安な予感もします。

どういうことかというと、例えばイラストで表現するとすればまず画力が必要になってしまうけれども、その長年培ってきたものは簡単には揺らがない、とも言えます。ところが同人音声というのは、たいていの人がいきなり、初めて作るものですし……。

いえ、何作作っても結局悩んでしまう、と言うべきかもしれません。いまだに、最初はイケると思って書き始めた台本が途中で迷走することも少なくないです。そもそも自分の性癖を、一時間超えのセリフ(だいたい2万字くらいです)にして、そのうえイラストレーターさんや声優さんを巻き込むことってなにげにハードル高くないですか……。

そういうことを考えているうちに、「性癖をぶつける」ということが何か漠然とした不安に変わってくるんですよね。やだー。

漠然とした不安。こうならないに越したことはないんですけど。

不安を振り切って、「イケる!」という手応えを掴むために。音声作品を作るときにいつも心がけているのが、「まず音声のコンセプトを決めること」です。

コンセプトを決めよう

最初に思いつくのって「甘々お姉ちゃんに癒やされたい」とかじゃないですか。それで音声の内容を考えるとすると……まあ赤ちゃん言葉は入れて、耳舐めして……みたいなことは考えられても、一時間分のお姉ちゃんのセリフを考えるまでのギャップって相当大きくてキツいです。

そこで、「ブラコンをこじらせたお姉ちゃんに強引に甘やかされる音声」というコンセプトを考えてみます。一歩踏み込んで「こじらせ」「強引」という要素を盛り込んだことで、どんな音声になるかという形が前よりずいぶん見えやすくなります。弟くんを可愛がるような率直なセリフをいっぱい言ってくれる音声だったら嬉しい、とか。勝手にお風呂に入ってきたり夜這いしてきたり、姉弟の一線を超えるような勢いがあっても良いな、とか。

たったひとこと具体的なイメージの用意があるだけで、音声制作がぐっとスムーズになったり。

「その企画の魅力が明確化されている最重要ポイント」を考えること。これがコンセプトを決める作業です。


ただあんまり計算っぽくなっても意味ないです。結局「己の性癖解像度を研ぎ澄ませる」ことに勝る武器は無いので、それを邪魔しない程度に。

くらげランプはシンプルに、「4つの質問」を考えるようにしています。

① ひとことで表現できる程度にまとめる

コンセプトを決めるときに陥ってしまいがちなのが、「すでにある音声と同じことをしても意味ないからひねらないと」という考え方です。

ひねると迷走します。

実際に人気のある音声を見てみると、必ずしも目新しさが評価されてるわけじゃないですよね。逆に1分で、いや2秒見ただけで「引っ掛かり」を感じられる企画が良い企画であることのほうがずっと多いです。音楽だと、一度聴いただけで耳に残る印象的なフレーズのある曲のことを「フックがある」なんて言ったりしますが、ちょうどそんな感じ。

「彼女がいるのにおっぱいの大きい幼なじみに迫られる」とか「コスプレイヤーのお姉ちゃん2人と同棲」とか「陸上部のボーイッシュ幼馴染NTR」とか、2秒見ただけでエッチだと想像がつく企画は強い。こういうのでいいんだよ、です。

欲求のツボさえ押さえれば人間そんなに飽きたりしない。世の中のエロいことの数はたかが知れてるけど、エロ本は出続ける。そういうことなんだと思います。

② どんな人に刺さるかを考えてみる

先ほど良いコンセプトとして紹介した「ブラコンをこじらせたお姉ちゃんに強引に甘やかされる音声」。確かに具体的で良いのですが、中には「お姉ちゃんは優しく甘やかしてくれないとヤダ」という性癖の人もいます。その人にとってはこのコンセプトは魅力的ではないのではないでしょうか?

結論から言うと、こういう性癖の差は当たり前のものなので、気にする必要はないと思っています。刺さる人に鋭く刺さればいい、というのがコンセプトの基本的な考え方です。みんなに刺さる音声を考えると、どうしても漠然としたイメージより先に踏み込みづらいので。

同じ理由で、「自分以外誰に刺さるのか謎」な音声の企画に挑戦するのも危ないです。そういう音声自体がダメというわけではなくて、作っているときによくわかんなくなっちゃうんですよね。自分に刺さるのって本能の部分だから、つい具体的にイメージするのをサボってネタ切れになったりプロットにまとまりがなくなったりする印象があります。

いずれにせよ、そのコンセプトが刺さる相手を具体的に考えてみることは有益だと思っています。お姉ちゃんの好みにもいろいろあるように、魅力って人によって様々ですからね。リスナーさんにどんな性癖が刺さるかを事前に調査するのは無理なので、「バーチャルなお客さん」を(一人~数人に絞って)想定してみるようにしています。

③ 武器を用意する

「バーチャルなお客さん」を考えることの利点は、漠然と誰かに向けて、とか、自分に向けて、とかのつもりで企画を考えるよりも、ずっと具体的なイメージを持って性癖を刺しに行けることです。

「お姉ちゃんも低音ボイスも好きな人」には「お姉ちゃんが低音でグイグイくる」音声が刺さるに決まっています。

こういうとき、既存作品のレビューがとても参考になります。聴いた人にとって「ここがこう素晴らしかった」という内容そのものが書いてあるので。「このレビュアーさんが喜びそうな内容は……」というふうに考えていくと、ただ漠然と音声を作るよりずっと具体的で強力なイメージが湧いてくるものです。

普段から人気の作品をチェックしたり、性癖と向き合ったりしていればしているほど、このパートが楽しいんですよね。

④ お手本を見つける

最後に、自分のアイデアを客観的に見るために強力なのが、お手本を見つけることです。

アイデア段階のものと、実際に音声になったものの間ってどうしても差があるので、作ってみないと分からないことってたくさんあります。たとえば……

  • あなたの専属メイドさん

  • ひょんなことから同居することになった学園のアイドル

どちらが音声にしやすい企画でしょうか?

圧倒的にメイドさんのほうです。

というのも、「ひょんなことから同居」の部分を説明するために導入が長くなって辛い……。それに役のイメージを伝えるときにも苦労しそうです。

こういうところに、アイデア段階で気づくのは困難です。一旦、同居ものの音声を探して聴いてみたりすれば、見えていなかったものが見えてきたりします。


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くらげランプが実際に作った音声と、そこに込めてる性癖の話とかも載せています。よろしければぜひ~。


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