「トレカの花子さん」

最近、最近、小学校で妙な噂が流行っていました。
休日の校舎の3階の女子トイレの入り口から三番目が使用中になっており、
3回ノックすると返事がして、トレカを購入することが出来るというものでした。

トレカであればあらゆる種類が取り揃えられており、大会でしか手に入らないレアカードなど、お金は掛かりますが望めばどんなカードも購入出来ました。

噂は瞬く間に広がり、休日のトイレは長蛇の列となりました。
誰もトイレの主の顔を見たことはありませんが、名前が無いと不便なので「花子さん」と呼ばれるようになりました。

ある子供は待ちに待った上に、1万円で珍しい1枚のカードを購入しました。
大喜びで家路につき、そのカードを早速デッキに取り入れて遊びました。

数日後、隣のクラスの子供がそのカードを譲ってくれないかと話を持ち掛けてきました。
始めはせっかく手に入れた貴重品なので、渋りましたが相手は2万円払うと言い、その場で交渉が成立しました。
ある程度使用して、少し端が折れ曲がってしまっていた割には高く売れたものです。

カードを売った子供は1万円でまた同じカードを買えば、1万円プラスになると思い、再び休日にトイレに訪れました。

しかし、花子さんは同じカードの購入には3万円必要だと言いました。
子供は大変迷いましたが、再び同じカードを購入しました。

数日後、隣の隣のクラスからそのカードが欲しいという子供が来ました。
もう二度とカードを手放さないと心に誓ったので、今回は交渉には応じませんでした。

「そんなに欲しければ、花子さんにお願いするといいよ。」

花子さんの噂はますます広がりました。
再購入したカードは端が少し折れ曲がっていたそうです。

END