「ジャスティス豆の木」
最近、最近、母親と2人で貧しく暮らしているジャックという少年がいました。お金が必要なジャックは牛を売りに行きましたが、途中でおじいさんに出会い、豆の種との交換を持ち掛けられました。
「この豆は天まで高く伸びる不思議な豆なんじゃ。」
この話を真に受けたジャックは交換に応じましたが、帰宅すると母に叱られました。
「何でそんな明らかな詐欺に引っかかるの!」
豆は外に投げ捨てられ、ジャックは落ち込みましたが、翌朝その豆は本当に天まで届く程に伸びていました。母親は気まずくて部屋から出てきませんでした。
ジャックは豆の木を登ろうとしましたが、周辺の住人達が集まり非難してきました。
「この豆の木が陰になって、洗濯物が干せない!」
「許可なく勝手にこんな大きなものを設置していいと思っているのか!」
「その木に養分が取られて、周りの植物に悪影響を与える!」
住人達はジャックの謝罪と制止を振り払い、斧を持って集まり巨木を切り落としました。
すると間もなく大きな男が空から落ちてきて大怪我をしてしまいました。
豆の木は雲に通じており、雲に住む大男が不審に思い豆の木を下りてきているところだったのです。
住人達は全てはジャックのせいだ、治療費は彼に請求しろと口々に言いました。大男はジャックに手当をしてもらいつつ、公平に全員の話を聞くことにしました。部屋に籠っている母親、豆を売ったおじいさんも含めて全員です。
「成程、確かにジャックには軽率な判断があったようで一定の責任はあるようだ。ただ、説明責任を果たさなかったおじいさんにも、豆を廃棄した母親にも、ジャックの言い分を聞かずに豆を切り落とし非難した住人達にも問題はある。」
自らが負傷を受けながらも大男は公平に判断し、全員に一定の注意と簡単な罰を与えました。感情的で過剰な非難を行う前に、理性的な判断と話し合いをするように促した大男は、雲の上に帰る手段を失ったので、おじいさんに豆の仕入れをお願いし、しばらくは街の相談役として暮らすことにしました。
END
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