「ハラ避けじいさん」
最近、最近、大きな会社に勤めているおじいさんがいました。
定年が近いおじいさんにはシロという部下がいましたが、その距離感を測りかねていました。昔と違って、厳しく接し過ぎるとパワハラと言われかねません。
気軽な世間話がセクハラに繋がるかもしれない、
飲みに誘えば、アルハラになるかもしれない、
距離を取り過ぎると逆に辛い思いをさせてモラハラになるかもしれない。
ハラスメントを恐れたおじいさんは雁字搦めになっていました。
ただ、当の部下であるシロはどこ吹く風でハラスメントに関して全然気にしない性格で、割とグイグイ来るタイプでした。積極的な仕事ぶりはおじいさんの業務を支え、いつの間にかなくてはならない存在になっていきました。
おじいさんもそんなシロのことが分かりかけて徐々に距離を縮め始めた頃、
噂を聞きつけた他部署の意地悪上司が、シロを半ば強引に引き抜いてしまいました。
意地悪上司はシロに膨大な量の仕事を与えました。
シロは優秀ではありましたが、1人では捌き切れない業務量と意地悪上司からの圧に耐え切れず、過労で倒れてしまいました。
お見舞いに来たおじいさんにシロは自分のデスクの引き出しを開けるように言いました。そこにはシロの作成したプロジェクトの企画書と意地悪上司のパワハラの記録がありました。
シロの代わりに企画を通したおじいさんは、プロジェクトを成功に導き、
定年前にひと花咲かせました。パワハラも告発し、意地悪上司はリストラされました。
意地悪上司の件もあって、シロの復帰後、再び距離感に過敏になりそうなおじいさんでしたが、今シロに寄り添えるのは自分しかいないと思い、ハラスメントを過度に恐れず、シロと積極的に関わって信頼関係を築き、定年まで元気に働きました。
END