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「星5の王子様」

最近、最近、砂漠で1人の青年と王子様が出会いました。
王子様は別の星から観光で訪れており、それまでにも幾つかの星を巡って来たと話しました。

1つ目の星では王様に会いました。
SNSで5段階の評価を国民からつけられており、自身の評価を5に保つ為、
王様は日々忙しそうにしていました。やりたいことより、評価されそうなことに一生懸命です。

2つ目の星では自惚れ屋に会いました。
毎日エゴサをしており、自分のことを称賛しているコメントばかりを追いかけていました。

3つ目の星ではアル中に会いました。
酒ばかり飲んでいることを指摘されて落ち込み、それを忘れる為に更に酒を飲んでいました。

4つ目の星では実業家に会いました。
売れそうなエンタメ作品に目をつけては、自分が才能を発掘したと主張して回っています。

5つ目の星では、技術者に会いました。
暗い路地に人感センサーで明かりが点くライトを設置する仕事で人の役に立っていました。

6つ目の星では地理学者に会いました。
様々な星を研究しており、地球という星を激推ししており、王子様に勧めました。

その勧めで地球に降り立った王子様は砂漠で青年に会ったというわけでした。王子様はそれから1年ほど滞在した後、自分の星に帰ることにしました。帰る前に青年は王子様に尋ねました。

「地球はどうだった?」
「まあ、他の星と大体同じだったよ。」
「そうか…」

青年は少し残念そうにしていたので、王子様はタブレットで2つのサイトを青年に見せました。どちらも王子様のアカウントです。

「こっちのサイトの僕の評価が星5、そしてこっちが星1…」
「随分と極端な…」

王子様は笑顔で続けます。

「でも、僕の評価は僕が自分で決める。本当に大切なことは目に見えないからさ。僕は地球を星3とするけど、君は君で決めればいいさ。」

青年はまた王子様に来てもらえるように、地球を今よりもっと良くすることを決意しました。

END

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