見出し画像

「広告な王子」

最近、最近、街の中心に幸福な生涯を送った王子の像が建てられました。
王子の足元には渡り鳥のツバメが住んでいました。

ある夜、眠っているツバメの上に大粒の涙が落ちてきました。
王子の像が泣いていました。ツバメが理由を尋ねると、王子の位置から見える町工場の人々の仕事が減っている様子を悲しんでいると話しました。

「技術力は高いのにそれを知る人達、活かせる人達がいないんだ。」

自分では動けない王子はツバメに頼んで、王子の像の剣を工場の人達に作って貰い、彼らを宣伝する為の広告を添えました。町工場の知名度は上がり、職人達は潤いました。

その後も王子はツバメに頼んで街中の人達の宣伝の為に、自らに広告を纏っていきました。才能はあるが貧しい劇作家の新作の告知、美味しい作物を育てるが流通ルートの少ない農家の販路拡大、名店ではあるものの、立地からあまり人に知られていない場所をアピール、多くの人々が王子とツバメのおかげで売れるようになりました。

一方で、金色だった王子の体はすっかり広告に覆われてしまい、金色の部分は全く見えなくなってしまいました。方々を飛び回ったツバメもすっかり疲れ果ててしまいました。

広告だらけの王子の像は景観を損ねると問題視されて、側で力尽きたツバメ共々撤去されそうになりました。

そんな中、王子とツバメに救われた人達が待ったをかけました。
役目を終えた広告を全て剥がして、皆でお金を出し合って像を修繕し、ツバメの手当をしました。

王子の像とツバメは「この街で最も尊い広告塔」であったことを讃えられ、
改めて街のランドマークとなり、多くの人々に愛されました。像の宣伝は街の人々が交代で行い、世界中の人に知られるようになりました。

END

いいなと思ったら応援しよう!