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「転生万事最高は今」
最近、最近、とある占い師がトラックにはねられて異世界に転生しました。
薄れゆく意識の中、占い師は思いました。
「これは不幸なこととは限らないさ。」
転生先で勇者とあがめられた占い師は、常人には無い物凄い能力を持っており、仲間と共に魔王を討伐しました。仲間は口々に良かったと讃え合っていますが、占い師は違いました。
「これが幸せなこととは限らないさ。」
仲間の1人に裏切られて占い師は命を落としてしまいしました。
占い師は更に別の異世界に転生しました。特に変わった能力は持たない上、かなり貧しい生活を送ることになりましたが、占い師は特に動じることはありませんでした。
「これが不幸なこととは限らないさ。」
今いる世界は、1つ前の異世界や元居た世界と比べて文明レベルがかなり低かったので、これまでの知識が大変役に立ちました。村人達から賞賛され、多くの富を得ることが出来ました。
「これが幸せなこととは限らないさ。」
良いことがあっても、悪いことがあっても占い師はぶれません。
逆境において冷静さは大切ですが、良い時はもっと楽しんだらどうかと村人は尋ねます。
「楽しみ過ぎると油断してしまうので気を付けているのです。占い師である自分でも未来は不確かなので、常に備えを忘れないようにしています。」
村人は占い師の心構えに感心し、自分達もなるべくそうあろうと思いました。
「こう見えて、私はいつでも「今」が一番楽しいと思って生きています。
今よりお金を持っていた時も、人に裏切られた時もありましたが、それらは全て過ぎ去った思い出です。未来に対して過剰な期待も寄せません。生きている間も、死んだ後も「今」が一番なんですよ。」
村人達は見た目や言動で勝手な心配をしてしまったと謝り、占い師もまた、心配をかけて申し訳ないと謝り、共に村の「今」を楽しむことにしました。
END