英語を読むための「頭のはたらかせかた」
まず、次の文を読んで意味を考えてみましょう。
The man painted in red conveys a powerful message.
英語の読解に苦手意識を持っている人が、がんばって読もうとするとこんな感じかな?
「まずは、the manだから『その男』で、そしてpaintedは『絵を描く』とか『塗る』という意味だから、『その男は絵を描いた』となり、そしてin redは『赤で』なので『その男は赤で絵を描いた』そして、conveysはちょっとわからないから辞書で調べて、意味は『〜を伝える』とか『運ぶ、運搬する』だから、ここでは『その男は赤で絵を描いて、強いメッセージを伝えている』という意味だ!」
こうした読み方は武器も防具も身につけずに素手で竜王と戦う、懐中電灯を持たずに富士の樹海をさまよう、フォーク、スプーン、ナイフを使わずにフレンチのフルコースを食べる、それぐらいむちゃをしています。
英語が得意な人は、一瞬で『赤く描かれたこの男は、力強いメッセージを伝えている』という意味だということがわかります。
この差は何だろう?
the man painted in redと読んだところで、painted in redが「赤く描かれた(塗られた)」という意味だと理解できるのです。そのために必要な知識は「paintという他動詞は目的語が必要だけれど、in redという〈前置詞+名詞〉のかたまりがきているので目的語がない」ということだったり、「〈painted +前置詞句〉だからこのpaintedは過去形ではなく過去分詞で前のthe manを説明している(過去分詞の形容詞的用法)」という知識です。この知識があればちゃんと読むことができるのです。
最後まで文を読んでから意味を考えることも大切ですが、こうした文法の知識があれば、左から右に読みながら情報を捉えていくことができるようになるのです。ただ、複雑な英文になると、何回か読み直して意味を考えるということは必要なので、それらについても練習してできるようになりましょう。
ここまで読んで、文法用語が出てきて大変だ、と思った?
でも、これはとっても大切で、paintは「塗る」とか「描く」という意味だから、普通はpaint the wallで「壁にペンキを塗る」とかpaint her fatherで「彼女のお父さんに色を塗る」だとおかしいので「彼女のお父さんを絵に描く」ということだと知らないと英語って正しく読めないのです。もちろん、知らなかったらこの段階で覚えてしまいましょう。
同じような英文で練習してみましょう。
The man told the story cried.
ポイントはthe man toldの意味をちゃんと捉えることですが、この3語をいくら眺めても正確な意味はつかめません。
動詞のtell+Oで「〜を言う」(tell a lieとかtell the truthとして使うことがほとんど)、tell 人+事柄で「人に事柄を話す・伝える」もしくはtell +事柄+to 人という使い方をします。
これがわかっているとtold the storyの後ろに〈to 人〉が来ていないので、このtoldは過去分詞になって「〜される・された」という意味だと判断し、「この物語を伝えられた男は泣いた」と読むことができます。つまり、the man told the storyが主部になり、criedが述部だということが判断できれば正しく英文を読むことができます。
大切なことは「主部」と「述部」がちゃんとわかるということなのです。主語の直後に動詞が来てくれる文は比較的優しいのですが、そうではない場合があるのです。つまり、主部のメインとなる1語を「主語」と言うのですが、この主語を受ける動詞が離れてしまう場合、言い換えると、主語と動詞の間にいろんな情報が挟まってくると読みにくくなるのです。
実際の入試で使われた英文を見てみましょう。
Subsequently the newspaper established the regularity of publication we associate with the modern daily paper.
Subsequentlyはly語尾の副詞で「その後に」という意味を表します。原則として主語にはならないという理解だけでOKです。
ということは、まだ主語が出てきません。
the newspaper established the regularity of…と見たところでestablishの目的語がthe regularity(「規則性」という意味)になっているので、主部がthe newspaperで述部はestablished以下になることがわかります。そうすると、新聞が「どんな規則性を確立したのか」という意識で英文を読むことができるのです。
前の2例と違ってestablishedは「過去形」です。この判断ができるようになるにはestablishは「〜を確立する」「〜を設立する」という意味の他動詞で、目的語が必要だという知識です。
ofは前後の名詞を結びつける働きがあるので、the regularity of publicationというかたまりとして捉えて「発行という規則性(定期的に発行すること)」と理解することができるわけです。
このように考えてくると、we associate withと続いても焦る必要はなくなります。the regularity of publicationという名詞のかたまりの後ろに主格の代名詞weが続いていると、「関係代名詞の目的格」でassociateの目的語がthe regularity of publicationであると判断できるのです。すなわち、「私たちが現代の日刊紙と結びつけて考える定期的な発行」という意味で、長い目的語になっていることがわかりました。
全体の意味は「その後、新聞は現代の日刊紙とおなじように定期的な発行を確立した」となるのです。
このように考えて英文を読む練習をしていくことで、左から右に理解しながら読み進めることができるようになるのです。そのためには、「かたまり」を見抜くことが必要で、ベースになるのが文法の知識になってきます。「かたまり」を捉えることを意識していけば、たとえばassociateという動詞を見たらassociate A with Bという形があり、asscisate with Bとなっていた段階で、Aの部分が前置もしくは後置されている、共通部分として省略されている、疑問文であれば疑問詞に変わっているなどといった頭のはたらかせかたができるはずです。
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