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くらげ×寺島ヒロ 発達障害あるある対談 第337回 「仕事の切り分けから考える障害者雇用代行業って何が問題なの?」ってお話

登場人物

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[く] こんばんは。くらげです。

[寺] こんばんは。寺島です。

[く] いやー、寒いですね。引きこもりがはかどります。

[寺] いつもは「1日一回は外に出ないと体調がおかしくなる」と言い続けているくらげさんでも引きこもりをエンジョイしているとは...!それくらい寒いんですね…。

[く] いや、なんやかんやと用事があるので1日1回くらいは出ていますけど…。気持ち的には引きこもりたいです。

[寺] それは引きこもってないのでは…。

[く] まぁ、今季最強寒波が来襲している間は都内だけでも雪が降ったり、台風が来たのかと思うくらいの強風が吹いていたりと大変でしたが、日本全国でさまざまな災害も発生していたようですね。

[寺] 大阪でも先週の寒波の時は雪がちらつきましたね…。今日は寝ていたら、娘に「カラオケ行くから送れ」と言われましてね、「それぐらい歩いて行けよう~」と言いながら起きたら外はみぞれ交じりの大雨で驚きました。幸い大阪では大きな被害という程の事はなかったようで「大阪結界」なんて言われたりもしていましたが...。

[く] 母親業お疲れ様です(笑)うちもあおの送迎のために車を出さないといけないのですが。

[寺] まぁ、車を持っている家族の責務のようなものですね(笑)さて、今回の話題は?

[く] 先日、障害者雇用の代行業が話題になったじゃないですか。

[寺] ああ、ずらりと並んだビニールハウスに様々な大企業の名前が書かれているとかいう話でしたね...。全く、制度の隙間をつく人というのはいるものだなあ...と思いましたよ。

[く] それに関連した話題を障害者就労の支援をしていた方がTwitterのスペースで話していてですね、ボクも聞いていたんです。そこで障害者雇用でキーパーソンになるのは仕事を切り分け・配分する人、という話が出ていて、これはどういうことなのかを考えてみようかと。

[寺] なるほど、キーになるのは確かにそうでしょうね。

[く] ある大企業の特例子会社では外部のケースワーカーだったかジョブコーチだったかがそういうのを非常にうまくやっていたそうなんですが、そのうち、その方が支配的になってきて、自分もその人の顔色を伺いまくるようになって大変になった、という体験を語っている人がいて、なかなか難しいものがあるな…と思いました。

[寺] それはそのケースワーカーさんなりジョブコーチさんなりのパーソナルな問題の気もしますねえ…。いやでも、実際仕事の切り出しや振り分けをするのは大変なんですよ… 一般の転職市場でも、そのポストがいつも空いてるって聞きましたよ。

[く] 障害者はそれぞれできることとできないことがありますから、仕事を割り振るのも大変だろうというのは想像できるんですが、では障害特性についてよく理解している人がやればいいかというと、そうでもないという...。

[寺] なるほどなるほど。ちょっと整理して順番にいきましょうか。まず、障害者雇用の代行ビジネス問題について、何が問題だったのかということから。

[く] どこが最初に始めたかは定かではないんですが、2010年ごろから貸農園を活用した障害者雇用ビジネスというのが登場し、じわじわと全国に広がっていたらしいんですね。どういうものかというと、就労を希望する障害者と指導役を企業に紹介し、就労場所として貸農園を提供して、企業から人材紹介料や農園利用料を受け取る、というものです。

[寺] 集められた障害者らはその企業に社員として雇われて、農園に出向してるような形になるんですね。でも「あの企業で仕事ができる!」と思って行った障害者から見ると詐欺ですよね~...。

[く] 最初から農園の仕事だとわかっていればいいというものでもないんです。これらの業者では複数の企業の障害者を農園に集めて、指導役として近くの農家の人をパートで雇って丸投げするらしいんですね。障害者の人は何をしていいかわからないし、農家の人は畑を放っておけないから一人で手入れして...。それでほとんど障害者雇用の実体のないまま給料だけが支払われるという事になっているようなんです。

[寺] 障害者の自立のための就労というのは名ばかりで、制度を利用して企業から多額の紹介料や使用料を取っている、よろしくないビジネスということなんですね。

[く] それで、最初に寺島さんが言っていたように、田舎に大企業の名前の書かれたビニールハウスが並ぶことになってるのかと...。

[寺] しかし、雇っている企業の方は給料を払わないといけないんですよね。働いてもらわなくていいんですかね?

[く] そこが闇深なところですね。そもそも企業が、なぜこのような業者に依頼してまで障害者を雇いたいのかというというと、障害者の法定雇用率というのがあって、一定規模の企業は全従業員の2.3%を障害者にしなければペナルティがあるんです。大企業の多い都市部のハローワークでは、ずいぶん前から障害者の求職者が足りない状況が続いていると言われていますよ。

[寺] ええ?そうなんですか。それは知りませんでした。みんな働きたいのに仕事がないって言ってるような気がするけどなあ...。

[く] それはもちろん、企業で働くことができそうな身体障害と、軽い知的障害や、比較的安定している状態の精神障害の求職者がですけどね。

[寺] あっ(察し)...うん。はい。

[く] 企業にしてみると雇用率未達成は社会的な信頼やイメージを損なうことになりますから、戦力になると分かっている障害者は雇いたいんですよね。でも面倒な障害者とは一緒に働きたくないという...。それで、会社の外に障害者を連れて行ってくれる業者に、大金を払ってでも頼るという構図になっているんですね。それに給料と言っても障害者雇用だと月10万円程度で昇給も無し、正社員とは比べものにならないぐらい安いですから。

[寺] 端的に言って腐ってますね。

[く] はっきり言いましたね!(笑) まあその通りなんですが。それで厚生労働省が2022年から全国調査したところ、少なくとも十以上の事業者がこのようなビジネスを手がけており、農園は全国に80カ所以上あったということです。雇用主という事になっている企業は東京を中心に約800社、働く障害者は5千人を超えるということです。

[寺] もはや「これが障害者雇用というものだ」という規模になっちゃってますね。これは大問題だわ...。

[く] 障害者の親などからは、「仕事をしなくて、正社員の地位と給与がもらえるのだから良い話だと思う」との声もあるそうです。障害者年金だけでは暮らしていけませんからね。

[寺] 一面では確かにそうなんですよね...。しかしそれは障害者の地位と生活を賄うに十分な社会的資産を分配されていないからですよ。捨扶持を与えられて食い物にされ続けるという立場に甘んじたいと思っている人はそう多くはないはずです。

[く] 今よりまし、ということですよね。こういう農園で働いている人は複雑な気持ちで今回の推移を見守っていることと思いますよ。

[寺] できれば政府には、件の業者を調査して終わりにするのではなく、何故ここで働かざるを得ない障害者がこんなにいるのかを真剣に考えて、今後の改善策を出してほしいですね...。

[く] しかし、実際に健常者だけで回っている職場に障害者を入れるというのが難しいというのはありますよね。自分が障害者として入っていくのも正直抵抗があります。そこで、障害があっても会社にとって十分な成果を出せるような仕事の割り振りをすることが重要になってくると思うんですが。

[寺] そこで、二つ目の「障害者雇用でキーパーソンになるのは仕事を切り分け・配分する人」の話題になるんですね。私もそれはそうだな~って思うんですが、そういう人材滅多にいないよな~とも思うんですよね。

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妻のあおががてんかん再発とか体調の悪化とかで仕事をやめることになりました。障害者の自分で妻一人養うことはかなり厳しいのでコンテンツがオモシロかったらサポートしていただけると全裸で土下座マシンになります。